働き方コラム #2 – 議論を絵で表す”グラレコ”、なぜいま人気?

グラレコって、何?

最近、徐々に耳にするようになってきたグラレコ(グラフィック・レコーディング)。
会議やディスカッションの内容を絵で記録することをこう呼びます。

もともとはファシリテーションを行う際に、議論の図式化を通して議論をまとめることをファシリテーション・グラフィック(通称・ファシグラ)と呼ぶことがあったようですが、海外ではGraphic Facilitationの呼び名のほうが浸透しているようです。

なぜ議事録ではだめなのか。
文字ではないのか。
絵であることに、どんな意味があるのか。

実際にグラレコをする現場で調査すべく、
グラフィック・コミュニケータ、本園大介さんの講義へお邪魔してきました。

取材イベント

グラフィック・レコーディング講座
2018年12月22日@協働ステーション中央

[ イベントサイト – こくちーず ]

講師

本園大介 / Daisuke Motozono
グラフィック・コミュニケータ。
グラフィックを用いたレコーディング、ファシリテーションを行う。

講義内容

( 初心者向けグラレコ講座 )
・プロッキーをどう使えば、思い通りに線がひけるのか
・喜怒哀楽を、まゆ・目・口で表してみる
・喜怒哀楽を、ポーズや動きで表してみる
・相手の似顔絵を描いてみる

参加動機

参加者の皆様に動機を伺ってみました。

仕事やボランティアでMTGをする際に、議論がわかりやすくなると思った。
プレゼン資料も、文字だけより伝わりやすくなりそう。

子供やお年寄りなど、文字が通じない相手とのコミュニケーションを図るのに良いと思った。

個人事業主をしており、グラレコを仕事にする術を知りたかった。

筆者も本講義をグラレコで起こしてみました。
上記の文字と比べて、理解しやすさはどうでしょうか。
もしわかりやすいのなら、グラレコの存在価値はここにあると言えるでしょう。

なぜ”絵が苦手である”と思うのか

講座では、プロッキーの使い方や、絵の陰影の付け方などを学びます。
特に陰影、人の描き方に苦手意識がある人に挙手いただいたところ、80%以上の方が該当。
みなさん、口を揃えて”絵が苦手”と言います。

参加者の方にお話を伺ううち、興味深い発言が出てきました。
表現することが苦手という言葉がありつつ、文字への苦手意識は低い人が多かったのです。
子供時代まで遡ると、「習字はうまくかけた」と言います。

どういうことでしょうか。
習字、硬筆はお手本を真似ることで”上手”な状態となる。
すなわち、模写をすること自体のハードルは、低いと思われます。

一方で、我々は、絵の授業でしっかりと絵の描き方を教わってきたでしょうか。
遠近法などを習いつつ、写生会のクオリティは習字よりばらつきがあったのではないでしょうか。

また、字は絵よりも書く頻度が高い傾向にあります。
講習会でも繰り返し出てきた言葉がありました。

”ノートや教科書に絵を描いていると、怒られる”

らくがきは、いけないこと。
授業というのは、傾聴して、板書を写す”べき”ものだから。
絵を描く機会が制限されることも多かったため、字よりも経験値が低く、苦手意識が高いといえそうです。

なぜイラストは人気なのか

怒られなければ、ノートに絵を描いていた人は多いのかもしれません。
では、なぜ絵を描こうと思うのか?

子供の頃、親に渡された進研ゼミの冊子。
漫画だけ読んであとは捨てるよねー…
そんな話をしたことはなかったでしょうか。

日本史、世界史。
教科書だと覚えられないけれど、漫画だと覚えられる。

人とのコミュニケーションでもそうですが、人間は物事を理解する時に、会話の中で得た情報を元に脳内で図を再構築している節があります。

そのため、変換作業がいらず、ダイレクトにそれが入ってくるイラストのほうが、瞬間的な理解度が高いと考えられるでしょう。
ここから、なにが紐解けるでしょうか。

”メッセ”だと気持ちが伝わりきらない理由

大事な話をするのにメッセではダメ、とよく言います。
お金の話、進路の話。
告白、プロポーズ、逆に別れ話。
なぜ文字だけではだめなのでしょう。

例えば、チャットアプリで人気のスタンプ。
いつスタンプを使うでしょうか。
楽しさ、嬉しさ、悲しさ、怒り…
そう、”感情”を表したい時ですね。

感情は、情報以上の複雑性をもつため情報量が必要になります。
文字だけの場合、例えば、本当は嬉しくなくても「嬉しい」と送ることができる。
逆に「嫌だ」と送ったら、ストレートすぎて、細かな感情が伝わらない。

”本音”を、ちゃんと聞きたい時には、本気度を知りたいから会いたい。

コミュニケーション手段によって伝えられる情報量や種類に違いがありそうです。

電話になるとどうか。
声の抑揚、元気のよさ、元気のなさ、イントネーション。
声から、その時の相手の様子を想像することができる。

そして対面になると、どういう服を着ているか、どういう仕草をとるか…
例えば、天邪鬼な人が「嫌だ」と言っていても、嬉しそうだったら、本音がどちらかはわかるはず。
逆に、ポジティブな発言をしていても、心から思っていないことがあれば、それも読み取ることができるはずです。

一度会っていれば、電話だけでも相手の様子が想像できます。
昔の友人などとSNSで繋がるだけでも身近に感じることができるのは、そこなのでしょう。

好きな人とは電話をしたくて、逆に喧嘩しているとメッセで済ませたい。
友達と頻繁に会うのはちょっと重くても、SNSでは繋がっていたい。

伝わる情報量が違うため、適切なコミュニケーション方法に切り替えていると言えそうです。

ビジネスコミュニケーションでの活かし方

「誠意を見せるのには、会うのが一番」

ミレニアル世代は、「メールでよくない?」と思いそうですが、特に現代のようにSNSが発達していなかった世代は、電話したり会うことが一般的なコミュニケーションでした。

友達ならば普段から連絡を取っているから良いかもしれませんが、あまり話し合う機会がない上司であったり、電話取引が多いお客様など、親密さを構築したい場合には、会いに行くことも時には重要かもしれません。
大事にしようとしてもらえたことが嬉しくて、心を許し、「実はね、」という会話が弾んだりする。
どれほどテクノロジーが進んでも、ビジネスの場で、ゴルフ接待や会食がなくならない理由がこれでしょう。

一方、単純なやり取りであれば、メールやテレカンでも十分となってきます。
必要以上に対面のやり取りを求められれば、特にSNS世代は疲弊してしまうでしょう。
アプリに慣れないシニア世代も、思い切って挑戦してみると、より彼らと仲良くなれるかもしれません。

グラレコは、図解での共有なので、やはり議論の場で有効そうです。
人間は物事を理解する時、ある程度体系立てて図で理解しようとするもの。
説明を元に頭に描いた絵を直接見ることで、自身の理解と合っているか確認することができます。

特に、テキストのみで理解しあえる間柄ではない場合、前知識が不十分で理解が難しい場合。
定量的、抽象的なコミュニケーションの方が得意な人もいます。

相手が普段触れている環境から、相手が得意なコミュニケーション方法を推測して、”わかりやすい”状態にしてもっていけば、きっと議論もスムーズに進むのではないでしょうか。
カジュアルな間柄であれば、議事録と一緒に添付してあげると、出席していない人にもよりわかりやすく共有することもできそうですね。

(理解しやすい方法は人によって違う中、脳内イメージを直接共有するのがグラレコ)

テキストとイラストをちょうどよく混ぜたビジネスツールがSlackと言えそうです。
スタンプや画像を簡単に入れ込むことができ、議論の可視化がメールより容易です。
スタートアップや新規事業チーム、営業チームなど、小さなチームの親睦を深めるのには最適でしょう。

[ ビジネスコラボレーションハブ・Slack ]

なぜいま、グラレコが人気なのか

会議などコミュニケーションの本質は”内容を理解する”こと
出席しているだけで必ず理解しあえたか…違いますね。

先輩のいうことをオウム返しにしていたら”100点のいい子”でしょうか。
一方的に情報を送りつけて理解したことにしてしまうのが”引き継ぎ”でしょうか。
本当に大事なのはそこではないですね。

理解しあうためのMTGなのに、話を聞いていない人がいる。
難しくてわからないからわかりやすく説明してほしいけど、言い出せない。
そんな目的と手段がごっちゃになっている状態がある中で、みんなで本当に理解しあって話しあいたい
そんな気持ちが高まってきている中でグラレコが求められているのかもしれません。

教育現場や仕事などにおいて、”あるべき”論の見直しが進んでいる証拠でもあるように見えます。
みんながホワイトボードに向かって、自分はこう思う、これはどうかなとディスカッションする未来が、いつかやってきますよう。
そんなことを思いながら、グラレコ講師たちは、人々に絵の描き方を伝えているのかもしれません。

絵の描き方がわからない、講座に行くのも気がひける…
そんな人はまずは、グラレコの神の二つ名も持つ、タムラカイさんの”ラクガキノート術”から始めてみてはいかがでしょうか。
まずは、怒られることなどないのだという気持ちから、ラクガキライフを楽しんでみませんか。

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[ タムカイさんのブログ – タムカイズム ]