Vol.54 – すがのさち / 本当の自分を隠し続けた私から漫画家・新井サチが誕生するまで

漫画が好きであることを隠し続けたけれど、とある機会をきっかけにふっきれて漫画を仕事にする道を選ぶことにしたすがのさん。
現在では漫画家だけでなく、漫画を用いたブランディングによる事業支援を行なったり、漫画家になりたい方向けの講義を行うようになりました。

彼女が漫画という手法を通して伝えていきたいこととは。

失敗などない、全ては成功のもと。
道がそこで終わることはない。

いま

– 今のお仕事内容を伺えますでしょうか。

MANGAブランディング(R)という屋号を抱えて個人事業主をしています。
企業や事業主の事業内容を漫画にしています。

ありがたいことに7-8月くらいで結構発注が増えてきています。
漫画で社会貢献ができる人にお仕事を振っていければと。
会社にしたいなと思っています。

本業の漫画家・新井サチのほうはお休みをしています。

最近は講師業もはじめました。

– 講師業とは?

働きながらプロを目指している人などを集めてプロットやネームの作り方を教えたりしています。
大人になるとなかなか漫画について話をする機会がないので、座談会もしています。

コロナの影響で、制作物の発注が臨時で途切れることがあって…
そこで講師業を開始しようと思い、4月頃から始めたんです。

– コロナの影響だと逆にweb発注は増えそうな印象だったので意外でした。

取引先がweb漫画じゃないところがあって影響が出ましたね〜。

– まだ紙のところありますものね。漫画の可能性はどうお感じですか。

大きい会社でも発注は結構増えてきているのでマーケティング手法としても注目されてきていますし、日本が誇る文化だと思っています。

– 漫画の言語をスイッチできるサービスも出てきていますよね。個人的にこれすごくいいなと思っていて。

グローバルでも日本の漫画文化は広く人気がありますし、色々とビジネスチャンスを模索できそうですよね。

これまで


(ご自身で描かれたカット)

– ご出身を伺えますか?

東京の練馬区生まれです。
育ちは埼玉の日高市になります。
山と川と谷で育ちました(笑)

– 自然がいっぱいの中で育ったんですね。

はい。
学校生活では明るくしていましたが、まだご時世的に漫画やオタクというのは言いにくくて…

– 陰キャはスクールカースト下位決定のご時世でしたし地方は特にそうですよね…私もそうでした…

幼児誘拐事件なども犯人が二次元好きであったということもあった時期で、世間的にオタクは危ない人というか、現実と二次元の区別がついていない人と判断されそうで隠していました…

– 二次元コンテンツを好む場合、理由は現実逃避とエンタメの2通りがあることが多いですが、前者が強すぎると区別がつかなくなると思われやすいということなんでしょうね。

そうですね。
実際現実逃避に使っていたところはあるのかもしれません。
友達もいましたが一人でも大丈夫でした。漫画の世界にいるのが楽しかった。

– わかります!創作って内省の極みみたいなところがあって、キャラ作りなんてハイパー1人壁打ちみたいなものですもんね(笑)

ほんとにそうですね(笑)
幼稚園の頃から描き始めて、小学生になったら交換ノートで漫画描いたり…
小・中学生でコピー本を作ったり…

– ほぼ一緒です(笑)私はそのあと高校生になってずっとWebサイト周回していました(笑)

私はコミケデビューが先で、そのまま漫画家に入っているのでアナログ中心なんです。
28才頃にPCを導入して、サイト周回を始めたのはその頃。

– あの…さしつかえなければジャンルを伺っても…(笑)

とにかくゲームが好きで…最初に出したのはドラクエ(ドラゴン・クエスト)、FF(
Final Fantasy)あたり。

– おお…FF7と9は描いてました…!(笑)

こないだFF7R(Final Fantasy 7 Remake)出ましたよね。
ミッドガル脱出までなのが悲しくて、全部出たら買おうかなって(笑)

– 発売日からずっとプレイ動画見てました(笑)

見ちゃいますよね。
あとは格ゲーが好きで、サムスピ(サムライ・スピリッツ)とか。そのあと時代劇とか…
漫画だとドラゴンボールとか。

– 誰推しなんですか(笑)

ベジータがミューズです(笑)

– ミュ〜〜〜〜ズ!(爆)

いやもうツンデレの始祖というか。
ベジータが死んだ時学校休もうかと思いました(笑)

高校でデザインに行った時にDB(ドラゴンボール)本を出したのですがベジータを汚せなくて…オールキャラ本とか出してました(笑)
少年漫画、ゲーム系に傾倒していました。

– う〜ん、わかりみが深い、私は2次創作はファイヤーエムブレムから入ってます(笑)そうなると、ご自身で描かれていたのも少年漫画系が多かったのですか?

高校でデザイン科に進んだのですが、上位互換のコースがあって…
そこに進む時に、グラフィック系もあったんですけど…
相変わらずオタクはひた隠しにしていたし、自分はプロになれないと思っていたのですが、ここまで漫画好きなんだったら漫画家を目指せばいいじゃんとここで思って。

先生に思い切って同人を見せたんですね、健全なほう(笑)

– 全年齢本www

はい、そしたら全然否定されなくて、ああ、漫画家って言っても気持ちがられたりしないんだってわかって。
そのあと周囲にもカミングアウトしていきました。

– そうなんですよね。意外といじめ漫画とかニュースでの先入観が強すぎて、周囲の子達は実はそんなにひどいことを考えてなくて、課題は自分にあったと気づくのが思春期はなかなか難しくって。

そうなんですよね。
そして漫画家さんのアシスタントとして就職を決め、並行してオリジナル作品を描きました。

– あの…アシさんて実際、どういうお仕事なんですか…?

あ、いろんなところ行ったんですけど…
作家さんがメインで人物を描くので、背景だったり服の柄だったりベタ、ホワイト、トーン。
今ではデジタルですが当時はアナログで、週の3日間泊まり込みでした。
家事までやってたので、作画より献立考えてた時間の方が長かったかも(笑)

– リアルバクマン!

他の突発仕事は本当に激務でした、締め切り前の追い込みみたいな。
大変でしたけど楽しかったです。

– いいなぁ〜。そのあとオリジナル作品がブレイクした形でしょうか。

最初、角川に持って行ってマンガ大賞に申し込んだら担当さんが付いて。
この方と二人三脚でいろんな賞に申し込んでたんですけどなかなか受からない中、この方が諸事情で北海道の実家に帰られてしまったんですね。

– えっ!

そうしたら、前の方とは相性がよかったというのか、なんとなく新しい担当さんと合わなくて。
思い切って作風も変えて、いよいよBL(ボーイズラブ)に行こうかなと。
そうして描き始めてたら、前の担当さんが北海道から帰ってくることになって。

– 運命(笑)

担当が少年漫画になるからそれでよければと言われ、全然やりますと答えて。
今はスクエニ(スクウェア・エニックス)になっていますが、ガンガンウイングで新人コンペが通り連載が決まりました。

連載を約2年半させていただきました。

– 月刊ですかね?大変そう…

読み切りもこなす前にいきなり連載だったので手探りで。
連載とはいえ一話読み切り型が多くて、たまに前後編にしたり。

– 銀魂スタイル。今のweb漫画っぽい。

そこからジャンル替えしてBLを描くようになり、14年くらいBLを描いています。

– 長っ(笑)

ただ少年漫画出身なのでBLなのにラブが少ないとか、そのシーンそんな集中線いりませんとか(笑)

– R18シーンで集中線はやばい(爆)

ベジータとカカロットの殴り合い友情みたいなのが好きすぎて、BLとはいえケンカップルみたいなのが多いんですけどね(笑)
あとリバ(カップリングのうち攻め受けが交代することがあるもの)も好きです!大丈夫ですか?(笑)

– リバいけます、固定過激派じゃないです(笑)

あっよかったー!(笑)
でも担当さんからリバあり解釈で描くと読者さんが混乱するからやめて!って言われたんですけど、10年経って描かせてもらえるようになりました(笑)

– ちょっと書けないですがあとで推しカプの話したいです(笑)

価値観


(異業種交流会にて)

– 物事を決める大事にしていることってありますか?

直感ですかね〜。
あとフラットでいたいという気持ちがすごく強いです。
肩書きや地位というものにあまり関心がなくて。
嘘も好きになれない。

– 虚飾ですねー。社会のほとんどはこれで構成されていますからねー。

飾っていることの綺麗さに関心がなくて。

– とてもわかります。作りたい世界観って何かお持ちですか?

漫画が好きなのでこの先の人生にも漫画に関わっていきたいなと。
漫画を使って皆さんを幸せにしていきたいと思っています。

どこかとどこかが繋がる時の橋に、漫画がなれたらいいと思うんです。

– エンターテイメントって翻訳の役割もありますからね。

それこそ地球平和みたいなところまで漫画が役に立てたらいいと思います。
命ある限り、そういうことに使っていけたらいいなと。

– 他者の課題解決をしたいという原体験はどのあたりにあるのでしょう。

私は自分自身も課題を抱えていて。
公言していますが、父への嫌悪感から男性恐怖症になり、ルームシェアで一緒に住んでいた女性とおつきあいを14年ほどしていたんですね。
ただ彼女がうつ病になってしまい、私もうつとパニック障害を併発して別居を決めて吉祥寺に引っ越した。

そこで知り合った家族から、どうして結婚しないのかと問われ事情を話したところ、カウンセリングを紹介されて行ってみたんです。

– そうしたら…?

なぜ父を嫌悪しているかが自認できたんです。
七五三の時、着物を着せられて白く塗られた時に母から「白豚のよう」と言われたことがきっかけで、自分の女性としてのプライドが削られてしまったということがわかりました。

– 呪いの原因がわかったんですね。そして解けた。

また、父が母に対して放任で、彼の実母を優先するスタンスでした。
そういうところに男性への不信感があったんですが、白豚の呪いが解けて、先生に「とりあえず、いいなと思った人とお茶でもしてごらん」と言われてそうすることにしたんです。

– ふむふむ。

そこでカメラマンの方と出会ったのですが、これが今の夫です。
一般の方だったんですが、明日コミケに行って写真をとる仕事があると言われ、そこで自分の話をして意気投合し、結婚となりました。
私は結婚は今生では無理だ、来世に期待しようと思っていたのですが、結婚して私自身がとても驚いています。

割とすぐおつきあいし、2ヶ月でプロポーズされ、4ヶ月で入籍しました。

– いや〜よかったよかった…出会ってしまえば早そうですね。

自分も勝手に被害者になっていたのかもしれないなと。
父にも祖母たちにも彼らなりの理由や背景があった。
自分がそれをひきずる必要はないのだと。自他分離です。

– 私も呪いがあって、原因はわかっているんですが自分に解く気があまりなくて…決めつけているところがあることはわかっています。でもカウンセリング受けてみようかなぁ。

見方を変えたり、視野が広がることで呪いは解けやすくなります。
異業種交流会に行くようになって、私はたくさんの”お父さん”に出会うことで解釈が広がりました。

– 「親」「上司」「恋人」「配偶者」など、相手の偶像に高めのKGI、KPIを勝手に設定して、勝手に怒っているのはわかっていて。これを解消できると楽になりそうですよね。

そうなのかもしれません。
呪いをといてくれるのは「出会い」であることが多いように思うんです。
ふと解けるその時のために、出会いを拒まないのが大事なのかもしれません。

– なるほど…プランドハプンスタンスの意味はそこにあるのかもしれませんね。

これから


(お互いが描いたそれぞれの似顔絵。左がサチさん作のNocchi、右がNocchi作のサチさん)

– これからやりたいこと。

冒頭でも申し上げましたが、今の事業を会社にして、つなぎ目になる役割を強めていきたいです。
作家業で仕事が切れてしまうと、自分で営業して売っていくのってすごく大変なんですね。

自分でも苦難を知っているので、同じ苦しみを持っている人を助けていけたらと思っています。

– 多そうですよね。漫画を描きたい方ってどういう方が多いんでしょうかね?

様々ですね。
持ち込みの方もいらっしゃれば、デジタルの方もいらっしゃいますし。
漫画広告の仕事を請け負いながら自分の作品を描いてらっしゃる方も。

最近では、副業エッセイ漫画で電子書籍を出している人などが増えてきていますね。

– インスタ、Twitterなどを見ているとエッセイ漫画増えましたよね。

みんな漫画好きなんだな〜と思います。
読む方も、文章が並んでいるとなんだかスルーしてしまいますが、漫画で描くと一度目が留まる。
ブランディングの仕事をしていても思うのが、文字よりも記憶に残りやすいというのがありますね。

– グラレコもそうなんですかね。記憶すべき情報に対して必要な容量が少ないのかな。これから描きたいものはありますか?

自叙伝を描きたいなと思っています。
社長さんの自叙伝も絡めて漫画にするというのをやっているのですが、それを自分でもやってみたいなと。

生い立ち的にジェンダーや家族など題材にしたいことは多くて。
共依存ではなく、自立したもの同士が寄り添うことがいい関係だと今は思う。
多くの人に、呪いを解いてもらえるきっかけになったらと。

– 素敵ですね。なんか私の人生相談みたいになってしまった(笑)ありがとうございました!

Special

今回は二人とも絵描きということで、イラストを描かせていただきました。

サチさん
推しのベジータ@ドラゴンボールを描いていただきました〜!
カッコいい!

Nocchi
サチさんの推しの飛影@幽☆遊☆白書か、自分の推しのリンク@ゼルダの伝説を考えたのですが久々すぎて描けず…
中学時代に散々描いたFinal Fantasy 9のビビ、エーコを描きました。

Guest

すがのさち

MANGAブランディング(R)スタジオMANECT 代表漫画家
商業漫画家PN/新井サチ
東京ネットラジオパーソナリティ『漫画家すがのさちの「人生”転”あり!」

商業漫画連載19年、8出版社25冊の単行本・電子書籍を発行。
漫画の持つ「わかりやすさ」「親しみやすさ」を最大限に生かし、経営者・先生業の方々のブランディング相談に乗り、想いやサービス内容を漫画化。

ミッションは、人生丸ごと、よかったこと、辛かったこと全てが唯一の自分ブランドになることに気付いていただき、世の中を良くしていきたいと願っているリーダーのファンが増え、リーダーの想いをMANGAブランディングで後世に伝え、世の中がもっと幸せになることを掲る。

「漫画でみなさまを幸せに」

1997年よりイラストレーターとして活動
2001年ペンネーム新井さち(サチ)で漫画家デビュー
2017年までに23冊の単行本が発売
2018年「だから運命だって言ってる」各電子配信サイトにて連載配信(出版社:グループH)
2020年最新作「ナンバー ~運命のトリセツ」各電子配信サイトにて連載配信(出版社:グループH/レーベル .FiZZ)

取引先出版社(敬称略)
小学館/徳間書店/白泉社/芳文社/竹書房/学研/ホーム社/小学館クリエイティブ/スクウェア・エニックス/グループH
取引先企業・事業 30件以上

Interviewer

Nocchi

プロの漫画家さんとお話しできて嬉しかったです!私、”狐崎のち”なのでペンネームがなんとなく似てるなと勝手に親近感を抱いてました(笑)

合同会社N.FIELD代表 / Polaris管理人
フルコミが見つからないSeriesA-CのStartup向けに、ブリッジCOO+CFO機能を提供。
大手銀行、IT企業新規事業部を経て独立。一般社団法人の事務局なども務める。
幼少期より人の思考回路に関心が深く、2018年よりPolarisを運営。
狐崎のち名義で漫画も描いている。

Twitter

note