※内容は、2019年2月時点のものです。
常に謙虚に、挑戦者たれ。
海外で育った豊田さん。
様々な価値観の人がいる方が自然で、彼女の世界観はとてもフラットで多彩。
自身はスポーツが好きで、それを仕事にしている今、自分の仕事が本当に好きだと語ります。
来月にはStartup Weekend Tokyo 2020の開催も控える彼女は、今後どのような世界を展望しているのでしょうか。
いま
– 豊田さん、いまなさってることを教えてください。
スポーツマーケティングラボラトリーにて、スポーツに関するコンサルティングや企業のマーケティングサポート、自社事業の運用などをしています。
今は出向しており、出向先でスポーツイベントのマネジメントに携わっています。
– 具体的な事例を伺っても良いですか?
自社事業ですと、東京六大学野球の試合動画を配信するBIG6.TVというサービスの立ち上げを担当していました。
[ BIG6.TV ]他社へのコンサルティングとしては、例えば自社のテクノロジーやサービスをスポーツチームやスポーツ施設に提供したい企業に向けて、どのように響くかをアドバイスしたり支援したりするといったことをしています。
– 面白いですね。元々、スポーツがお好きなのですか?
私、大学が早稲田のスポーツ科学部でして。
部活もラクロスをやっていました。
子供の頃から体を動かすのは好きでしたね。
– 好きなものを、そのまま仕事にした感じでしょうか。
そうですね…
私、身体があまり作れていないのか、学生の頃に部活でよく怪我をしていて。
脱臼や靭帯…時には手術をすることもあって、医者、医学療法師、トレーナーなどになりたいなと思っていたんです。
その中で、スポーツに一番近いのはトレーナーだと感じ、スポーツ科学部へ入ったんですね。
でも、いざ入ってみたら、自分が体を動かす方が楽しくなっちゃって。
あまり勉強してませんでした(笑)
– 部活に専念されていたのですね(笑)
ただ、トレーナーというのは絶対数はそれなりにいるのですけど、収益化がうまくできていないといった課題はあって。
また、大学時代も結構怪我をしたのですが、救急搬送で結構たらい回しにされることもあり、医療分野においても課題はずっと感じていました。
そういった課題を解決するためにはビジネスの力が必要だと思い、ビジネスを作れるようになりたい、と大学にいた頃考えていました。
– なるほど。トレーナーや医療系でのご経歴はお持ちなのですか?
いえ、スポーツ系は今が初めてで、現職は4社目です。
最初はIT系ベンチャー。
3期目で、メンバー70人なのに新卒30人みたいなところで。
事業家を育てるというビジョンがあいました。
あまり大企業に行きたくなかったというのもあります。
その会社では、上海のソーシャルゲームを作る部署にすぐ異動になって。
その後、所属していた部署が売却されまして、売却先のKLab所属に変わった形です。
その次は、シリコンバレーのVCで働いていました。
現地に住んでいましたが、日本の企業からお金を集めてファンドを作ったり、日本のスタートアップに投資をしていたので、日本とは密接に関わっていました。
– では財務のバックグラウンドもお持ちなのですかね。
うーん、どちらかと言うと、やっていたことは営業に近いのかなと。
お金を取ってくる仕事と言うのは、もう営業。
投資も金融の知識というより、スタートアップの伸び方を見る、事業分析的な内容でしたので。
– そうなのですね。そこからの転職は、どういったきっかけが。
シリコンバレーにいた頃、スタンフォード大学が近くだったのですけど、大学の同級生がそこでトレーナーをやっていて。
彼女によくチケットをもらってスポーツ観戦をしていたのです。
アメリカにはスポーツが日本よりさらに根付いていて、大学スポーツの試合も近所の人やOBOGが老若男女集まっていて楽しんでいました。そういった姿を見て、日本でも同じような状況を作りたいなと感じて。
最初は起業したいと思っていたのですが、考えたテーマから少々時期尚早かなと思い、帰国してご縁があった今の会社に入りました。
– 起業したら、どういうことをされようと?
ファンタジースポーツというゲームのようなものがあって。
スポーツ好きが集まって、ドラフト会議して、そのチームに賭けて遊ぶんです。
アメリカではすごく流行っていますよ。
– 実際にチームを組成するわけではないのですね。
ロトは完全に運だとすると、ファンタジースポーツは自分の予想に基づく賭け。
リーグに所属する選手をどれだけ深く分析するかがカギになります。
スポーツ業界は、収益源が狭まっていると当時なんとなく感じていて、新たな収益源にもなりますし、ユーザーがスポーツに熱中するきっかけにもなるなと。
一方で、いざ起業しようと調べてみると、法律的な環境がまだ整っていないこともあり、大手も撤退していて。
今は難しいのかなと。
元々ソシャゲ会社にいたこともあるので知見もありますし、私にこそできるかなと思っていたのですけれどね(笑)
– これは、いつか時期が来たらやりたいと思ってらっしゃる?
どういう形かはわかりませんが、事業として可能性はあるのかなと。
賭け事として見ると、ドル箱にはなるので、儲けだけに走った人が着手すると、どうかなと危惧していて。
自分がやるのならば、きちんとスポーツ界に還元されるような座組みで、整えられたらと思っています。
これまで
– 子供時代、学生時代。
私あまり昔の記憶がないんですよね…(笑)
親が金融機関勤務だったのですが、転勤の関係で、2歳から6歳までNY、6歳から8歳までロンドンにいて。
– 帰国子女だったのですね。
そこから日本に帰ってきて、中学は高校まで一貫の私立校へ。
海外にいても英語は全然出来ませんでしたが(笑)
– えっ、そうなのですか?
大学試験で一番苦手だったのも英語でした(笑)
日常で生活することはいいのですけど、ビジネスで会話するとなるとちょっと。
– 海外で育ってよかったなと思われますか?
色んな人がいることに抵抗がないことはすごくいいなと。
日本にいると、同じ人種しかいないので不自然感はあります。
– そうなのですね。海外で生まれ育つとアイデンティティがよくわからなくなると、聞くこともあって。
どこかに定まっていない感じはずっとありますね。
一つの所にいたいという気持ちは、あまりないです。
故郷がどこかにあるという感覚もないですね。
でも、私には、よかったと思っています。
強いて言うなら英語はできるようにしておいて欲しかったですが(笑)
親も色々と気にしてくれていて、帰国後も日本の学校でいじめられたりしないように、帰国子女っぽくなりすぎないように、日本人学校に入れてくれていました。
– 私は帰国子女に憧れていた方なので羨ましいです。ミドルネームはあったのですか?(笑)
いや、全然(笑)
特に外国人の友達がいるわけでもないですしね。
– そうなのですね。幼少期は習い事とかはされていました?
色々としていましたね。
ピアノ、バレエ、水泳、英会話、テニス…
ほとんど記憶がないので、どれをやってよかったというほどではないのですが(笑)
海外だったのでサマーキャンプ文化があって。
幼稚園の時に、家からの通いで行っていたみたいです。
珍しくトランポリンとかやっていて、面白かったと言う記憶はありますね。
– 楽しそうですね。帰国後はいかがでしたか。
中高が一貫の女子校で、校則も少ない自由な所でした。
この頃はバスケ部で、部活にすごくハマっていましたね。
弱小校だったので、大会では全然勝てなかったですけどね。
– 羨ましいです…大学はいかがでした?
付属大学はなかったので、受験しました。
ここでもやっぱり部活ばっかり(笑)
中高は割と自由な進学校という環境だったのに対し、大学はスポーツ推薦入学が半数、アスリートに囲まれる環境で、だいぶ違う世界でしたね。
– 新たな刺激がありそうですね。子供の頃からの夢はありましたか?
小学校の先生とか…その時々によって、ですね。
多分、身近なものに惹かれるのだと思います。
一応、教職の免許も持っていますよ。
– 教育にも興味がおありなのですね。
なんとなくですけどね。
人が育つ過程は気になっていて、人材開発とかにも興味はあります。
価値観
– いま、一番情熱を持ってやっていることは。
仕事ですね。
結構大きいプロジェクトに関わっているので、ふと冷静になって、ああ、今自分は、すごいものに関わっているのだなぁと思うことがあります。
中高大と部活に熱心だったので、今は仕事に集中している感じです。
– 仕事はお好きですか。
大好きだと思います。
やらされている感はありません。
この後もオフィス行こうかなと思っています(笑)
– 素晴らしいですね…!豊田さん、自然体で、すごく素敵です!
もちろん仕事の全てがやりたいことなわけではありませんが、チームに貢献することでプロジェクトがうまくいくなら頑張りたいと思ってやっています。
– プライベートでは、ご趣味はありますか?
スポーツ観戦ですかねぇ。
半分仕事、半分趣味。
今はやる方はしていないです。
オリンピックまでに、全ての競技を観に行こうと思っていて。
さっきはテコンドー観に行ってました(笑)
– テコンドー!
元々は、どうやってファンを呼び込んでいるか、楽しませているかを観たかったので、プロ興行ばかりに行っていました。
最近はマイナースポーツを観にいくようになって、魅力をもっと伝えるにはどうしたらいいんだろうと考えたりしています。
– 特にお好きなスポーツはありますか?
バスケをやっていたので、それは一番観やすいですね。
あと、パラスポーツ(パラリンピックの競技)は関心高いです!
– 例えば、どういったものが。
迫力でいくと、ウィルチェアーラグビーや、車いすバスケ。
陸上や水泳も馴染みがあるので観ていてわかりやすいと思います。
例えばパラ陸上のトップ選手って、健常者よりもいい記録を出したりするのです。
日本での大会に招致されていた海外選手を目の前で見たときにも、その迫力に圧倒されました。
– すごいですね!感動しそうです。
これから
– いま、5億円もらったらどうしますか。
え、考えたことないですね…(笑)
何かをやるには少ないですね。
– 事業をやろうとすると少ないですよね。
うーん、起業のタイミングで使うかな。
投資するにも少なすぎるし。
– もっと大きな金額だったら?
スタジアムを作りたいかなぁ。
海外のスタジアムってすごく格好いいんですよ。
本当に観客の体験を考えて作っていて。
日本の場合は公共財産として作られることがほとんどで、同じような形や作りのスタジアムが多いのですが、興行のために使われるアリーナやスタジアムを、とてもいい立地に作ったら面白そうだなと。
– なるほど。目指す世界観はどういうものでしょうか。
自分自身について言えば、スポーツには関わっていたくて。
スポーツを変えると言うよりは、スポーツと言うのは媒介だと思っている。
それを使って、社会とはどうやって変えられるのだろうということを考えたい。
そういう提起をしたくて、今ちょうどStartup Weekend Tokyo 2020と言うのに携わっています。
– 3月15日から、丸の内のStartup Hub Tokyoで開催でしたね!
[ Startup Weekend Tokyo 2020 ]はい。
スポーツとは何かを考え抜き、使い方を提唱し、世の中を変えていくことをしたいなと思っていて。
例えばソーシャルスポンサーシップと言う概念をご存知ですか?
– いえ、存じ上げないです。どういったものでしょうか。
いわゆる社会貢献活動をしているNPOがいる。
しかし資金力がなくて広報活動などが満足にできないとする。
一方で大企業はCSRと言う概念を通して世の中での認知を変えたいと思っているところがある。
スポーツとは、それを利害関係なく繋げることがある。
繋げることをボンド機能、拡大することをアンプ機能と言います。
その時、アスリートやスポーツチームというのはハブになる可能性がある。
バスケでいくと、B-LEAGUEがその取り組みを作っています。
アメリカでは、NBAがNBA Caresと言う取り組みをしています。
子供達への競技や健康管理の指導をやったりだとか、とても幅広い。
そう言う力を上手く使って、届けるべきところに届けていきたい。
誰かのペインをどう解決したいと言う明確なものが、自分の中にあるわけではないのですが。
ただ、これのスキームがたくさん作れれば、色々なペインを解決していくことはきっとできる。
だから今はこれを増幅していくことをしていきたいと思っています。
まずはお金がないと出来ないので、お金も作っていく座組みも必要なんですけどね(笑)
– 素敵ですね!そういえば、Startup Weekendにはどのように関わり始められたのですか?
Womanの回(女性起業家にフォーカスした回)に参加したのがきっかけです。
確かベンチャー周りの動向を調査する中で知ったのではなかったかな。
そこからSportsの回に参加し、今回2020をテーマに開催すると伺って、参画した形です。
面白いアイデアがたくさん出てきたらいいなと、今から楽しみにしています!
– 私も楽しみです!ありがとうございました。
終えてみて
豊田さん
この先何をしたいかが、まだふわっとしているなと自覚が持てました(笑)
将来が見えなくて不安だと言う人は多いと思うのですが、私はむしろ将来がわかったら面白くないって思う方で。
これからも型にとらわれず、いろんなことに挑んでいけたらと思います。
Nocchi
海外育ちの影響もあるのかもしれませんが、自分の”やりたいこと”、”ありたい姿”に対してすごく自然体な方だなという印象でした。
自分のあり方、社会との関わり方など共感しつつ、自分はまだまだ社会の目を気にしているのだなと反省。透明感のあるとても素敵な方でした!
起業にもご関心おありとのことで、その際にはまたぜひインタビューさせていただきたいです。
Profile
豊田紗耶美 / Sayami Toyoda
東京都出身1988年生まれ
学生時代は部活に熱中し、卒業後は中国、日本、アメリカにてITベンチャー、ベンチャーキャピタルにて勤務。現在はスポーツマーケティングに携わる。