Vol.37 – 穂刈 正樹 / フリーランスのために”Anything | チームフリーランス”を創ることにした話

※内容は、2019年4月時点のものです。

さまざまな会社での勤務を試すも、しっくりこずに、フリーランスの道を選ぶことにした穂刈さん。
フリーランスに多く出会うも、その大変な現状に直面し、フリーランスのための事業を創ることにしました。
これから選ぶ人も増えていくであろう、会社員ではない生き方とは。

高校生までは鶏口牛後でした。
現在は…“今を生きる”、です。

いま


– 今やっていることについて教えてください。

Anything|チームフリーランスという任意団体の代表とFreelanceNowのコミュニティマネージャーをしています。
フリーランスを集めて、チームで仕事に取り組んだり、フリーランスのためになる企画をしています。

[ Anything| チームフリーランス ] [ Freelance now ]

– 企業側は、どういった会社が多いのでしょうか。

スタートアップが多いです。
yentaで毎週20名くらいお会いしてはいますが、実際は紹介で成約することが多いです。

[ yenta ]

– 案件としては、どういうものが多いのでしょうか。

HPの作成、アプリの開発など、開発系が多いです。

– ご自身のベーシックインカム確保は、どのようになさってらっしゃるのですか?

僕自身は、フリーランスになろうと決めた時に、まずハードルの低いWeb製作から始めまして、そこからフロントエンドエンジニアをしています。

ただ、守備範囲外の案件がくることもあって、その場合は、自分がコミュニティマネージャーをしているFreelance nowというコミュニティで、メンバーを見つけていることもあります。

FreelanceNowは黒田悠介さんというフリーランス研究家の方が、立ち上げた日本最大級のフリーランスユニットです。「働き方の多様性を高める」というビジョンが黒田さんと私で一致していたこと等もあり、現在は運営を任せていただいています。

[ フリーランス研究家 / 黒田 悠介 ]

– そうなのですね。黒田さんとの出会いは?

僕は元々、インターンを多く経験してみたものの組織に所属する働き方というのがしっくりこなくて。
当時は、組織の性格が合わないのだろうかと、とにかく数をこなして、合う組織を探しました。

– ふむふむ。

しかし、新卒で銀行に入社にしてみたのですが…
会社の問題ではなく、自分自身に会社員という働き方があっていないのだということに気付いたんです。

-何事もやってみないとわからないですものね。

そう思います。
会社員でないならば自分で仕事を探すか、事業を起こすしかない。
どのみち、自分の強みはこれですというのを創り出さねばならない。

– ここを見つけるのに苦労される方は多いですよね。

そうですね。
それからフリーランスとして数年の経験を積んだのちに、
あるフリーランスコミュニティにたどり着きました。

そこでは、フリーランス向けのシェアハウスなどや、ゼロスタート向けのフリーランス養成をしています。
僕はそこで、スタッフとして応募・勤務してみました。
フリーランスの実態を、まず知ろうと思いまして…。

– 実態を知るには、まずコミュニティに入ってみるのが一番ですよね。

その関連で毎年200人程度がフリーランスとして卒業していくのですが、一部を除くと十分な年収と言える稼ぎ方が出来ている環境には、正直見えなくて。

-会社員から独立したのではなく、最初からフリーランスの場合はベンチマークもないので、特に大変そうですね…

そうなんですよね。
そこで、もっとフリーランスの実態を知りたくなって、フリーランス関係の団体を捜しました。
そうしているうちに、Freelance Nowを運営している黒田さんにたどり着いたのです。

-なるほど。

彼と相談し、Freelance Nightというイベントをやってみました。

[ FreelanceNight Vol.5 ~フリーランスは食べていけない!?~ ]

そこで、フリーランスが食べていく方法というのは、ざっくり言うと人脈構築という話になったんです。
自分1人だと、知らない人相手では、信用がないので。

ということは、誰か知り合いの紹介や、どこかの所属であれば、ある程度それが担保できそうだ、という話になる。

-そうですね。

そこで、フリーランス株式会社というものを作り、フリーランスの信用を担保していこうという話になったんです。
最終的には、役員報酬を決める段になって、役員が個人で案件を受けられないという問題に当たってしまい、一旦法人化は見送っていますが、引き続き検討はしています。
他にも近いうちに、「フリーランス大学」であったり、FreelanceNowの特性を生かしたフリーランスのためになるものを企画中です。

– なるほど、できるといいですね。穂刈さんご自身は、周囲にロールモデルとなるようなフリーランスがいらっしゃったのですか?

いや、それが、いなかったんです。
父は大企業の社員だったのですが、海外赴任が多くて家族が離れ離れで暮らしていました。
私はどちらかというと、家族みんなで一緒にいられるような働き方をしたいと思っていました。

-同意のない転勤制度は、本当に不幸しか生まないんですよね…

そう思います。
家族以外でも、学校の同級生だとか、親戚にも、フリーランスの人はいなかったですね。

– フリーランスをやってみて、仲間に出会えたなという肌感はありますか?

フリーランスコミュニティに行ったことがやはり大きな転機で。
この働き方があっているという確信を得るとともに、今まで自分が苦しんできたことを解決していこうと思いました。

-私もStartup weekendで初めて、自分と同じような価値観の人はこんなに存在したんだという感動がありました。

これまで


(幼少期の穂刈さん)

– 子供時代、学生時代。

わんぱく、自由、元気(笑)
外でよく遊んでいましたが、年齢を重ねるにつれてゲームにハマっていきました。

成績はクラスで2-3番くらいという絶妙な位置をキープしていましたね。
中学・高校の時は塾に行っていました。
ただ、高校の時はほとんど自分でやっていましたね。

– 習い事はしていました?

英語を少しやっていたのと、野球チームに所属していました。
野球は全然フライがとれなくて、あんまり楽しくなかったです(笑)

小さいころは運動している人がカッコイイというのもあって、適性がなかったのかもしれませんが、なかなか辞められませんでした。
クラブとかには入っていなかったですが、本当は将棋のほうが好きでしたね。

-ちょうど思春期って、自己承認が終わっていないこともあって、まず周囲から評価されようと行動してしまって、その矛盾に苦しむ人が多いですよね。

まさにそういう感じですね(苦笑)
運動は中学で頑張っていたんですが、実は、高校から身体能力が上がりまして、
それと比例して、体育の成績も上がっていったんです。
ただ、そんなに運動が好きではない自覚も出始めていたので、そんなに頑張らないようになりました…

-できるようになれば、そこまで固執せずにすむんですよね(苦笑)

そうですね。
高校はワンダーフォーゲル部に入っていました。
ただ、楽そうだから入るという。
男子だから運動部入っとかなきゃ、みたいな気持ちは、まだ残っていたのかも(笑)

[ ワンダーフォーゲル編集部ブログ ]
www.yamakei.co.jp
 
ワンダーフォーゲル編集部ブログ | 山と溪谷社
https://www.yamakei.co.jp/wandervogel-editors/
ワンダーフォーゲル編集部ブログ

– アンコンシャス・バイアスだなぁ、大変ですよね…好きな科目はありました?

[ アンコンシャス・バイアス – 無意識の偏見 ]

勉強自体は特に強制されることもなく、両親が本当に自由に育ててくれまして。
勉強が好きだったとか、好きな科目があったとかではなくて…単純に僕は負けず嫌いだったから成績を保とうとしたんじゃないかなと。

理由があるわけではないけれど、僕は、一番でいたい。
特に高校は同じくらいのレベルの人が多いので、一番を取りやすかった。

-成績がいい分、やりたいことが見つからないモラトリアムに陥りそうな…

そうですね、文系・理系に特にこだわりはなかったです。
ただ、理系に進むにしても、数2Bが難しくて…(苦笑)
親には国立に進んで欲しいという気持ちがあったので、なんとか現実的な路線として文系でした…。

– 大学では、どのような。

受験勉強を始めたのが遅くて…高校三年生の夏頃です。
家族の“国立に行って欲しい”という希望に沿って、信州大学の教育学部へ進みました。

[ 信州大学 ]

ただ、自分のやりたいことを考えて、休学して1年浪人したんです。
結局、横浜国立大学の経営学部に入りなおしました。
学校の一教師をやるよりは、学校を創りたいという気持ちがあり、経営を学びたかったんです。

[ 横浜国立大学 ]

-そうなのですね。バイト等はされました?

バイトというか、勤務というか…
家庭教師のサークルのような会社で役員を募集をしていて、それに応募しました。
それとは別に、家庭教師や飲食店のバイトもしてはいました。

周りより早く動いていたくて、インターンも2年生から始めましたね。

– 早いですね。どうやって情報収集をしていたんですか?

インターンの情報自体は3-4年生向けに大学で提供されているので、それを見に行っていました。
あとはネットで検索していましたね。

-多く経験されたとおっしゃってましたね。

はい、20社くらいはインターンを経験しました。
ただ、長くても1か月でした。
数を見たかったんです。

– どういう会社を選ばれたのですか。

外資金融からブライダル、旅行まで様々です。
全業界を網羅したかった(笑)

-やってみていかがでしたか。

何かがあわないなという肌感があって。
経験を踏んだ今だからこそわかるのですが、「僕じゃなくてもいいな」という肌感がありました。
先程の繰り返しになりますが、それは会社が合わないのではなく、僕の働き方に相違があったんですね。

– エラーが出るものにたいして、トライ&エラーを繰り返したわけで、結構大変でしたね。

そうなんですよね。
でも後悔したくなかったから、トライし続けてよかったと思う。
ただ、その時間をコーディングやフリーランスの道をまっすぐ選べたのかなとは思いますけどね。

完璧主義の場合は特に、どんなにやってもきっと後悔する。
だったら、目の前のことに一生懸命できたら、後悔は少ないと思います。

価値観


(大学祭のオープニングアクトをやることになり、一日限定で髪を染めた穂刈さん)

– いま、一番情熱を注いでいること。

今は、自分の力を活かして、人の役に立ちたいという気持ちが強いです。
それと、自分と同じように悩む皆さんの、役に立ちたいです。

-穂刈さんの強みは、何なのでしょうね。

僕は、自分の才能のなさを大学で痛感したんです。
挫折を覚えた。
それまでは成績も運動も上位だったから、優秀なほうだと自負していた。

– 挫折…?

横浜国立大学は、東京大学の後期入試に落ちた人たちが受けに来ることも多いのですけれど、彼らがめちゃくちゃ優秀で…。
僕はそれまで天才肌だと思っていたのですが、そうじゃなかった。
ただ、努力の人だったのだと感じたんです。

– それではダメなのでしょうか…挑戦し続けることの方が、圧倒的に難しいことです。

僕は、なんでも自分が一番じゃないといけないと思っていたんです。
だから、悲しかったですね。

– これ以上できないくらい努力したという自負が、あっても、だめなんでしょうか。

さきほど、後悔したくないから一生懸命やることにしたとは申し上げたのですが、やっぱり結果は欲しいんですよね。

– 私は、人と違うと言われる部分こそ、その人の強みだと思っているのですが、変わっているねと言われますか?

変わっているとは言われます(笑)
…なんでもやってきたこと、そのものが、変わっていると言われるのかな。
金融から食品衛生まで資格を取っていたんですよ。

なんでそんな資格持っているの?
なんでそんな資格に興味を持ったの?
変わっているね。

僕は、できないことがあるのが嫌なんです。
なんでも、全部自分でやりたかった。

– カバレッジが広いことが特徴なのかもしれませんね。俯瞰は経営者に必要なスキルだから、経営者に向いているのかも。

そう言われるのは嬉しいですね(笑)

– 文系フリーランスの最終形態は経営者なんじゃないかなと最近思っています。将来のビジョンをどう描いていますか?

フリーランスの価値そのものを高めるという、大きな方針はあります。
そして、そういう社会を構築した上で、自分の価値がさらに発揮できる気がする。

– では、その速度を早める努力をしている、というところですかね。ご趣味は?

バレーボールです!
高校2-3年のころに作ったチームでバレーをやってます。
未経験者のバレーチームがないなと思って、存在価値があるなと思ってます。

– 存在価値(笑) やっていて純粋に楽しいことはありますか?

あります!アニメとか漫画とかちゃんと好きですよ!
野球のMAJORとか見ていると泣いちゃいます。
結構感動する方なんですよ(笑)

[ MAJOR ]

– よかったです(笑) おすすめのアプリはありますか?

やっぱりyentaですね!
昨年8月頃から使い始めて、本格的には昨年10月くらいから。
直接お仕事を頂くこともあります。

課金システムがあるのですが、僕は毎月1,000円くらい課金していて。
課金するとマッチング率が上がるっぽいです。
最近は経営者をめがけてマッチングしていますよ。

これから

– 今年やりたいこと。

働き方の多様性を高めたいです。
そのためにFreelance Nowを好きにやっていいと、黒田さんに承諾を頂いていて。

どれくらいの裁量で動いていいかと彼に聞いたら、許可ではなく反省で動いてくれと言われたんですね。
「何が正しいのかは私(黒田さん)ではなく社会が決めるのだ。」と…。

– KPIはありますか。

明確なものはないのですが…
自分で仕事を取ってこれる人たちになってほしい。
なので、勉強会や、クラウドワークスでの交流会なども検討しています。

[ フリーランス交流会 ]

何事も、慣れればストレスなくできるようになっても、出来ないことの一度目のハードルというのはとても高い。
少しずつ、そのハードルを下げてあげたい。

FreelanceNowでは、Yentaとも提携していて、最近では、経営者・決裁者と会えるようになるための1つのきっかけとして、COLABOとの提携もいたしました。

[ 経営者のためのマッチングアプリ – COLABO ]

-あとは収入面なのでしょうね。

そうなんです。
まずはエンジニアがゼロベースで食べていける世界を創る。
その次に、非エンジニアが片手間でも収益を上げられる世界から、ゼロベースで食べていける世界へ昇華していく。

– 非エンジニアの職種としてはどういうものを想定されていますか?

ライターとか…
あとは、企画職、リサーチャー、PR・人事、営業あたりでしょうね。

-文系フリーランスが増えにくい理由はなんなのでしょうね。

総合職の方が考えなくていいし、給与もいいというのもあるのでしょうけれど…
独立すればいいのに、って言われるポジションが心地いいのかもしれませんね…。

– だからこその副業のような気もするのですけどね。

実際、やりたい意思もそんなにないのかもしれません。
会社員は、政治さえやれれば、なんとかやっていけますし…。
もちろん、それでいい人は、そうすればいいと思います。

-会社という組織が所属者へ対して働きかける設計が、ちょっとね…。

フリーランスについては、2種いると思っていて。
自力解決できる優秀タイプと、社会になじめないなど仕方なく挫折タイプ。
例えば黒田さんは優秀タイプだと思うのですが、僕が過去のスタッフとして見てきたコミュニティのフリーランスは、消極的な理由でフリーランスになっている人も少なくはありませんでした。

何かできないかと、彼らに仕事を分け与えるということをしましたが、うまくいかなかったんです。
だからこそ、きっかけを与えるようにしようと思いました。

– お腹が空いた人に、魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える、というやつですね。

そう。チャンスを作る。
魚の釣り方は今はどこででも入手できるようになった。
怪しい情報もたくさん出てきているので注意は必要ですけどね。

一歩踏み出すことは大事ですが、稼げるには再現性を高めることが重要なんです。
また、付加価値をつけなくても、元から価値が高い業務を選べば、だれでも稼げるはずなんです。
だから、稼ぎたいならそもそもエンジニアになるべきだ、とも思います。

– 穂刈さんが創る世界が楽しみです。

黒田さんが私にいろんなものをくれた。
個人だけでまかなえない怪しさが消え、企業からの案件をもらう時にNDA(秘密保持契約)がすごく結びやすくなった。

これはきっと黒田さんが僕に貸してくれたもので。
だからこそ頂いた恩をどうにかして返していけたらと思っています。
僕がこうやってインタビューに出たり、Freelance Nowを盛り上げることが、巡り巡って黒田さん、そしてフリーランスのためになればと思います。

– ありがとうございました。

終えてみて

穂刈さん

最初テンパっていて、自分が何を答えているのか全然覚えていないのですが(笑)、一方で、やはり楽しかったです。
自分が何かを伝えることで、誰かの役に立てればと思います。

Nocchi

私もFreelance Nowに登録してみた時にご連絡をくださった穂刈さん。
今後も新しい生き方を選ぶ人たちのためにできることを、一緒になにかやれるといいですね。

Profile

穂刈 正樹 / Masaki Hokari
1992年生まれ、神奈川県出身。
・Anything|チームフリーランス代表(https://newfreelife.net/anything/)
・Freelance Now|コミュニティマネージャー(https://freelancenow.discussionpartners.net/)
・フリーランス株式会社 代表取締役社長(設立予定)