Vol.3 – 中村 龍太 / 業務委託、個人事業主…三足草鞋のサイボウズ社長室長

※内容は、2018年11月時点のものです。

逃げて、逃げて、逃げまくった先に、独特な自分の世界がある。
そして今は、インターネットの先に、自分を必要としてくれる人がいる。

いま

– 今のお仕事について教えてください。

大きく三つあります。
正社員としてのサイボウズ、業務委託としてのNKアグリ、
個人事業主の屋号としてコラボワーク、となっています。

サイボウズは社長室で、今年の7月からマネジャーをしています。

NKアグリは、リコピンニンジンという人参を栽培する小作人をしています。

コラボワークは、今ちょうどブランディングしているところなのですが、
”好きで出来ること”=スキデキ業を立て付けに妄想中。
固定せずその時々で役割が変化するもので、便利屋ではなく、
自分の好きなもの、出来るものだけから仕事を選びます。

パラレルワーカーとして自ら人体実験をしています。

– どんな1週間を送られていますか?

サイボウズが4日間、副業とお休みで3日間です。
月曜を副業集中に充てていますが、その時々で変化します。
オフィスにいることもありますが、人参の栽培もしているので農作業もしたり。
地味に草むしりとかもしますよ(笑)

明日は鳥取に行きます。飛び回っていますね。

– お気に入りのお仕事ツールは。

Macbook Proとiphoneを使っています。
ツールはガルーンとキントーン、Slack、G Suit、Office365…
使っていないのはSalesforceくらいで、関係者によって色々と変わります。

– 効率をあげるためにやっていることは。

仕事によって場所を変えることですかね。
タスクをこなすのは会社のオフィス。
何かを妄想して企画する時は家やカフェ。
考えごと系をするときには音楽を聴いたりもします。

– テンションが上がること、気分転換、お休みの日にすること。

ちょっとマニアックなんですけど…ジンバル。撮影機材です。
モノを文字で表現するのが苦手なので、いろんなものを撮影して
3分動画をプレゼントしたりするのがすごく楽しいです。
伝えるという効率性と共に、とにかくテンション上がります(笑)

あとは普通に、撮りためたテレビ番組を見たりですかね。
『ブラタモリ』が好きです(笑)あとは『僕らの時代』など。

これまで

– どうしてこの働き方を選んだのですか。

今の働き方を選んだ理由は『仕方なく』。
お金のためですね。
前職はMicrosoftだったのですが、縁があってサイボウズに
誘っていただいたものの、オファー頂いた給与が半減で驚きました。

それでも転職の機会を生かしたかったですね。
当時40代だったので、50代になったら転職は無理だと思い。

家族へは説明が難しいため、副業がOKな制度を活かして
サイドビジネスを始めることにしました。
Webデザインやシステム開発などをやる20人規模の会社に入社しました。

– そこから農業や複業に転換された経緯が気になります(笑)

サイボウズでは、キントーンの用途開発をしているのですが、
その中で、農業の分野においてのクラウド活用を一つテーマにしていて。
そこで関わっていたのがNKアグリで、お客様としての出会いが始まり。

NKアグリは、和歌山でレタスの栽培と販売、全国の農家さんと栽培提携をして、
リコピン人参「こいくれない」のブランディングと販売をしています。
人参はリコピン値が積算温度で決まるのでIoTと親和性があると思い、
キントーンで生育管理しましょうという話になったんですね。

そこで、本当に生育管理ができるのかなぁ?と疑問に持ち、
自分ごととして人参を栽培してそれを買ってもらう業務委託で入り、3年目となります。
最初の1年目にやった収穫から洗浄、パッキングまでのラストワンマイルがつらかった。

– 実際に複業をやられてみていかがですか。

今の働き方になった6年目になりますが、全体的には楽しい。
一番印象的な経験は、人参とサイボウズの関係で、
安倍さんに働き方改革の文脈で意見出しをするために総理官邸に行ったことですかね。
こういう仕事の仕方をしていないと行けなかったところでしょうね。
その時は楽しいとかいう余裕はなく、もう心臓バクバクでした。

話が長いと、レッドカードやらイエローカードが出るんですよ。
(実際には色はないそうです)
もう緊張しますよね。イエローカード2回出されました(笑)

学生時代

– どんな学生時代でしたか?

勉強が嫌いでした。
小学校から話をすると、親が転勤族だったんですね。
教科書がどんどん変わり、勉強についていけなかった。
きっと、だから勉強が嫌いだったんですかね。

高校はちょっと偏差値高めのところを目指したのですがダメで。
滑り止めの男子校に入りました。

一貫して楽しかったのは”放送委員会”ですね。
転勤しようが、どこにいってもそれを選んでいました。
高校は高専でもないのに商業科や機械科のある珍しいところで、
ある日、情報技術科の先輩が委員会にAppleⅡを持って来て。
知らないですよね、AppleⅡ(笑)
(すいません、わかりません笑)

その影響でNECのパソコンを買ってきて。
プログラミングに初めて触れたのはその時ですね。

大学へは推薦で入りまして、そこでは情報処理研究会に入りました。

– どちらかというと理系がお好きだったのですかね?

そうですね。国語は嫌いでした(笑)
当時はバブルに入って間もない時期だったので
大手IT会社も絶好調で、そのまま推薦でNECに就職しました。

– 当時の自分に言いたいことはありますか?

あまり過去は振り返らない性格なんですが。

でも「よかったね」と言いますかね。
自由に、ストレスもあまりなく過ごせた。
偏差値が高いところにいたらそれはそれできつかったのかなと。

と、いいことにしておこう(笑)

– 子供のころの夢は。

その場その場で適当なことは言っていたかも。
科学者!とか。
特筆してなりたかったものはないですね。

出来なかったものはたくさんありました。
父親が野球好きだったのですけど、千本ノックとかやらされていましたよ。
それは嫌でしたね~(笑)

転勤が多かったこともあり、夢というより馴染むのにどうしたらいいんだろう、
という悩みを抱えていることが多くて。
それが大きな割合は占めていたかもしれません。

その結果、小学校での水泳は頑張っていました。なにか一つ、ほしくて。
ただ、自分の場合は、それが必ずしも
小学校での居場所を与える成果にはならなかったですけどね。

毎日目の前のことを一生懸命こなして生きている感じでした。
夢からの人生ではなく積み上げの人生、と呼んでいます。

価値観

– 龍太さんの幸せとは。

…変ですよ?
今日もおしっこが出た時です、、、わっ恥ずかしい(笑)
生きていることの実感なんですかね。

うれしいのは、人から「スゴっ」と言われること。
他人がやらなくて、僕が好きで出来ることをやって、「すごい」と言われたい。

僕は、戦うのが嫌いなんです。
勝ち負けという概念が好きではない。
同じ土俵に立っていると勝ち負けが決まってしまうので、
ヤバイと感じたら、別の場所に逃げる!
そうするとその相手と戦わなくていい。
しかもそこで「すごい」と言われれば、戦わずして心地よい気持ちを味わえる。

逃げることへのイケてなさ……。
でもそれを今は肯定している自分がいます。

– 逆に絶対にやりたくないことはありますか?

性格的にやっちゃってから考えるのであまりないですね。
大人なのでモラルはもちろん守るのですけど。

– 大切にしていることは。

『信頼』です。
これがないと仕事をもらうことはできません。
特に個人事業主のような働き方をするときには重要です。

嫁の実家が農業で、そこでは人のつながりが濃いのですが、
僕はあまりそういう濃厚な関係性が好きではないです。
でもNKアグリの仕事をきっかけに圃場を近所の方に
お借りするプロセスから、信頼という言葉の重みを学びました。

これは、『信用』ではないのです。
信用は過去からくるもの、信頼は未来からくるもの。
信頼には感覚的なものが入る、スキル×覚悟なんです。

スキルは過去のものだけれど、覚悟はそう思うだけのこと。
誰でもでき、未来思考なんです。
どちらかがゼロになると、これはゼロになります。
スキルは年をとるごとに増え0ではないので、自分の覚悟で0にも100にもなる。

– やりたいこと、欲しいもの。

やりたいことはたくさんありますよ!

組織開発コンサルを経験してみたいです。
小学校のプログラミング教育で先生と新しい授業も作っていきたい。
地域のコミュニティ作りの研究もやってみたい。
新しいことをやる中小企業の応援もしたい。
パエリア用のお米を作っているのでそれも育てたい。

…すべてをやる龍太は、他人には、ほぼ真似できないものになると思います。

欲しいものは『健康』。
親の介護とかも見ていると健康の大事さは痛感します。

これから

– これからの日本。

良いところがたくさんある国なので、それだけでも残れるのではないでしょうか。
外国人に日本の良いところを聞かれたら、きっと『食べ物』と答えると思います。
四季があることの稀有さ、すばらしさ。

日本人自身は気づいてない人も多いですが、
この地形から来る多様性の尊さは素晴らしいですよ。
そして、それを誇れる国であってほしいとも思う。
うらやましいと思われるような国だし、そうあってほしい。

個人の好きなことができる世界感があるともちろん望ましい。
気候、地震…様々な要素はある。
明日生きている保証などない中で、「もののあはれ(無常感)」のような
生き方を学んだ民として、他国にはない価値観を提供する国、でいてほしいかな。

日本の国土は狭い。
希少価値みたいなものも出すのもありかもしれませんね。

スペインを学びにしています。
お米をやっているのでスペインにたまに行くのですが、
あそこには、将来の日本に参考になるものを感じる。
あの国も気候が豊かなので農水産業に困らず、餓死しにくいところ。

普通の学生が物乞いをしていたり、その辺で違法業者みたいなことをしている人もいる。
日本はカッチリしていてすぐに取り締まられるけど、
対話しながら人と人との関係性をすり合わせていく……
もう少し緩くてもいいのかなとは思います。

– これからの働き方。

全然わかんないな(笑)
意外と変わらないのかもしれないですね。

今の社会システムには乗れない子はもう出てきている気がする。
決められた時間、カリキュラム、コミュニティ。
パーソナライズに慣らされた人たちがそこになじめるとは思えず、
それはもう会社になればなおさらですよね。

そうなってくると、社会が早いか本人の変化が早いか。

リモートワークは増えそうですね。
パラレルワークはどうなんだろうな。爆発的に増える印象はないかな。
いやー、しかし、わからないな(笑)

とはいえ、魚の取り方はじりじり学んでいるのではないでしょうか。

– これ、初めて訊きます。自分の老後。

年代によって、どんどん価値観が変わっていますよね。
でも、僕は、若い年代の人たちとも同じ目線で話せ、
一緒に学び合いができるおじいちゃんになりたい。

– 素敵ですね。私も生涯そういう人間でありたいです。ありがとうございました。

Profile

中村龍太(複業家・ポートフォリオワーカー)

1964年広島県生まれ。
大学卒業後、1986年に日本電気入社。
1997年マイクロソフトに転職し、いくつもの新規事業の立ち上げに従事。
2013 年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。
さらに、2015 年には NKアグリの提携社員として就農。

現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークのポートフォリオワーカー。
2016年「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で
副業の実態を説明した複業のエバンジェリストとして活躍中