Vol.48 – 中村志穂 / 金融、宇宙ベンチャーを経て地元の志賀高原でSPARK OUTLANDSを立ち上げた話

志賀高原のスキー旅館に生まれ、スキー選手を目指して渡米後、
帰国して外資系金融のゴールドマン・サックスに入社した中村さん。
彼女が次に選んだのは、なんと全く畑の違う宇宙ベンチャー。
そしてこの夏、東京から長野へ移住し、そこで起業を開始しています。

アクティブな彼女が行動を選択する時の指針とは?
多くの人がなかなか登れない階段をかけ上がり、それでも、まだまだだよと明るく笑う彼女は、とても魅力的です。

上善は水の如し。

孔子の言葉なのですが、誰にでも必要とされる”水”は重力にしたがって自由自在に形を変えながら流れていくことができるという意味。
私も、そんな風に生きたいと思うのです。

いま


(SPARK OUTLANDSのロゴ)

– 志穂さん、やっとインタビューができて嬉しいです!改めて、今されていることを教えてください。

SPARK OUTLANDSという会社を最近立ち上げまして、代表をしています。
7月までは東京と長野の二拠点生活をしつつ宇宙ベンチャーに勤めていたのですが、8月から地元の長野に戻って起業した形です。
志賀高原でのおみやげを使ったプロモーション事業を中心に行なっています。

– 起業家の女性にお会いする機会は私でもまだまだ少ないのですが、知り合えて本当に嬉しいです。立ち上げすぐですが、順調に進んでらっしゃいますね。

はい、地元の八十二銀行さんで数千万円、資金調達させていただきました。
志賀高原は、観光産業として経済規模が結構大きくて、長野県の中でも来場者数はTOP4なんです。

長野県は創業件数は少ないけれど廃業件数は多くて。
旅館経営にひもづくものが多いですが、その分創業支援がしっかりしていて、今、調達環境はかなりいいです。

– そうなのですね。SPARK OUTLANDSの事業内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。

はい、私は志賀高原の癒しの宿幸の湯というお宿に生まれて。
もちろん実家の活性化もしながら、新しく立ち上げたこの会社を通じて、地方支援など、実家を含めた地元のプロモーションをしていきたいと思っています。

– お伺いしたの、昨年冬でしたね。その節はありがとうございました。地元のプロモーションは具体的にどういうことをされていらっしゃるのですか?

地元志賀高原の新たなおみやげの創出を行なっています。
ホテルや道の駅などでの販売営業を進めています。
長野県庁からもお仕事を頂いたりしているのですが、事業推進にあたり地元の金融機関の人もすごくサポーティブで、とても感謝しています。

– 地域との連携が肝になりそうですね。SPARK OUTLANDSに込める理念というのは。

今、働き方にこだわらず、「ライフスタイル」ということにこだわっている方が増えていると感じていて。
何より、おそらく私と主人がその象徴で。

– お子さんが長野、両親が平日東京勤務の2拠点居住で、お二人とも事業創出に関わっていて、と素晴らしいロールモデルですよね。

家族という形態に限りませんが、場所やライフステージを固定せずに、流動的にどこでも経済性が途切れないことこそが、自由に繋がると思うんです。

– 住むことについても、最近様々なサービスが出てきていますね。Polaris Interview Vol.2の日置さんもそうでしたし。

そうですね。
住み放題サービスのADDressさんとも提携したりしています。

多拠点居住を推奨するというよりは、本当に好きな時に好きな場所で働くことを各人が選べるようになるということ自体がよいことだと思うのです。

– 働き方改革の本質ですね!志穂さんはパラレルキャリアでもあって、他にも、女性のために様々なセミナーやイベント、ネットワーキングを通じて、学び続ける場も提供されていらっしゃるのですよね。

はい、プロフェッショナル女性のためのエクスクルーシブなコミュニティである「THE CHOICE 」の運営をしています。
東京が主な活動拠点となりますので、長野と東京、そして時によっては海外と究極のテレワークを経験させて頂いています。
多種多様な 業界で活躍する女性が集う社交場、そして、キャリア・プライベート共にステージアップを叶える学びの場として、チームと共にプロフェッショナル女性を盛り上げていきたいです。

– ご招待いただいて一度参加させていただきましたが、活動的な方々がとても多いですよね!

独立された方、大手の役員の方など、素晴らしい方々がたくさんいらっしゃるコミュニティです。
性別に限りませんが、女性特有の困難なども乗り越えて、自分らしく輝くために、多くの女性にご賛同いただけたらと思います。

– ですね!THE CHOICEの皆様もいつかインタビューさせていただけたら嬉しいです。

これまで


(SpaceBDでの中村さん)

– ご出身は長野県ですね。

はい、2歳からスキーをしてました。
あそこに生まれてしまうと他にやることがないのですよ(笑)

– 早い!(笑)

ちょうど長野オリンピックの時に中学生だったので、自分も選手を目指したことがあるんです。
実は高校の時にスキー留学としてアメリカにいたんですよ。

– えっ!そうだったのですね!

でも、スキーをやっていてもどうなるのだろうと人生を考え直して。
高学歴、稼げる会社、というキャリアを描いた結果、上智大学へ進学し、ゴールドマン・サックスへ入社しました。
稼げるといえば外資という印象と、英語を活用したくて。
投資信託の営業やマーケティングなどをしていました。

– 金融は難しい中で、本当にチャレンジングで尊敬します。かなりハードそうな印象がありますが…

大変ではありましたが勉強になりましたし、当時の人脈は今も活きています。
13年くらいお世話になった後、半年だけ別の金融系の企業で業務委託をしていまして、その後、宇宙ベンチャーのSpace BDへ入社しました。

– 金融から宇宙まで幅広いですね。Space BDを選ばれた理由というのは…?

実は、ずっと、いつか地元に帰ろうとは思っていたのです。
だから経営者になろうと思っていた。
その勉強のためにも、尊敬できる経営者と一緒に働きたいと思ってJOBを探していた際に、ヘッドハンターの方からご紹介いただいたのがSpace BDだったのです。

– そうだったのですね…!

本当になんでもやっていました。
人間力など非認知スキルが高いのは宇宙飛行士ではないかという観点から、教育事業を広める担当として携わらせて頂き、今年の夏までお世話になりました。

– そういうご担当内容だったんですね。

宇宙はとても面白かった。
一方で、本当に自分がやりたいことを考えた時、それは地元の活性化であったり、自分で会社をしたいという気持ちが強いことに気づいた。
なので思い切って決意しました。

– これに子育てが入ってくるので、お忙しそうですね。

そう思われそうですが、子供たちは長野の実家におりますし、社会で育ててもらっている感じですよ(笑)
仕事に関しても、自分が経営をしているので、時間管理は完全に自分次第なんです。

– わかります!私も勤務制限がなくなって、ものすごく解放されました。多くの人にこれは体感してほしい。

自分で管理できるタイプはこちらの方が向いているでしょうね。
今は、カナダ人の方を雇わせていただいているのですが、初めて人を雇うという行為をしまして。
税金や社会保険料ってこうなっているの…!という驚きなど、新たに触れることがたくさんあります(笑)

– そうなんですよね…社会保険料は改めて勉強し始めると奥が深くて(笑)

それでも全てが学びだし、自分の糧になり、誰もがやらない経験こそが価値になっていく手触り感もある。
そしてどれもが新鮮で面白く、経営というのは大変ですがとてもいい経験になりますね。

– はい、新しいもの好きのタイプには向いている職業だと思います。

価値観


(志賀高原のマグ)

– さて、ご自分のミッションとはなんだと思われますか。

多くの方を繋いで、新たな価値観やライフスタイルを広めることで人々を幸せにすることだと思っています。

– なるほど。人というのは、どうしたら幸せになるのだと思われますか?

やりたいことをやれていること。
ある程度の経済力。
そしていい人間関係ですかね。

”せねばならない”で頑張っている人が多い気がするのです。
そうではなく”やりたいこと”で頑張れるといい。

お金だって、場所に紐づかずに入ってくるようになったら、いろんなことが自由になると思うのです。

– わかります…。私も評価制度と勤怠管理からの解放こそ、自由そして幸せの鍵だと思うようになりました。

志賀高原もとてもいい場所なんです。
夏はとても涼しくて山の自然を楽しめるし、冬はスキーができて、海外からのお客様も多く、いい人も多い。
そういう場所で仕事ができて、収入が得られたら、いいですよね。

多くの人がもっと自由に人生を楽しめたらいいと思います。

– やりたいことを探して苦しんでいる人から相談を受けることが多々あるのですが…彼らへのアドバイスを何かお持ちですか?

う〜ん、きっとやりたいことは誰の中にもあるんだと思うんです。
わからなかったら、まずは足を動かす。Try & Error。

悩んでるということは、立ち止まってしまっていて、動いていない=暇になってしまっているから不安になると思うんです。
動いていたら、何かをやらないといけなくて悩んでる暇はなくなっちゃうから。

– そうですね。それに、やり始めると、やりたいことって芋づる式に出てきますしね。

日本の教育は「正解はこれです、これ以外は間違いです」でしょう。
しかも減点主義。
金融にいると特に、レールから外れることだとか、ミスは死刑みたいな文化でしょ(笑)

– ですね。決算業務やってた時期は修正あると2-3期やり直しだったりするのでほんと必死でした。営業の時も電話取るのが遅いってファイル投げられたりしてましたね(笑)

間違いなく行うことが仕事ではあるのでピリピリしてしまうのは仕方がないところはあれど、それこそAIやツールに任せて、余裕を持った状態で人生過ごせるといいですよね。

– この辺り、教育に対してご関心をお持ちだったりするのですか?Space BDでも教育事業をご担当だったのですよね。

そうですね、関心はあります。
経験した人にしか、ものが語れないという事実はある気がして。
だからこそ自分が様々な道を歩こうとも思うんですよ。
私は今36歳ですが、40歳になった時には、また別のことを伝えられる人間になれていればいいなと思う。

– 素敵です!志穂さんも日本の中では珍しいキャリアパスにお見受けしますが、行動の決定軸というのは何かお持ちなのですか?

まぁ、高給の金融を辞めて宇宙ベンチャーに行ったり、それも辞めて起業したりしてるから、珍しくはあるのかな(笑)

行動の決定軸は、メインは”自由”だと思います。
そのために経済性を求めるので事業性をよく考えるようにしている。

あとは面白いという直感。
今まで触れたことがないものに対してそう感じる。

– う〜ん、まさにエフェクチュエーション。

現時点だと地域活性化、事業継承、女性の活躍、こういった分野への関心が強いです。
地方自治体ってこうやって予算をとっているんだとか、そういうことも知れること全てが面白く感じる。

– こうやって吸収して、きっとまた新たな階段を登っていかれるのでしょうね。

そして人に関わることが好き。
元気がよくて明るくて、人を楽しませてくれるような人がいいですね。
経営者にそういう人が多い気がしていて。

前向きで、行動的で、変化を好んで挑戦していく気質でしょう。
私たちはどちらかといえばそういう気質で、我々はそういう人たちと話していると気が合って、でもそうじゃない人たちもいて、社会はそれで成り立っているからそれでいいのだと思う。

やりたいことばっかりやって、人の指揮系統下にいられない人たちばっかりだったら社会は成り立たないですもんね(笑)

– みんなが互いの幸せの形が違うことを理解した上で、お互いのために協力できると良いのかもしれませんね。

これから


(THE CHOICEでの中村さん)

– 今後1年でやりたいこと。

まずは冬におみやげ事業をしっかり立ち上げたいです。
あとは場づくり事業。
ゲストハウスと別荘の間のような、リモートワーカー向けの場所を実家の宿をベースに作れたらと思っています。

地方自治体からのお仕事をたくさんもらえるようにしたいですね。

– 地方自治体って予算を結構お持ちなんでしょうか?

税収と国の補助金、そして地方債による収入がありますね。
もちろん渋るところは渋りますけれど、一度信頼を得られれば、中長期的な関係が築けるのではないかと思います。

– 地方自治体のお仕事ってどういうものがあるのでしょうか。

プロモーション、若者活性化など。
古い校舎を改造して新たな施設にしたり。
ふるさと納税のプロジェクト管理だったり、色々とあります。

一方で書類作業が大量にあるので、そこは見合いですね(笑)

– テレカンもSlackも厳しそうですし、ビジネスマインドも違いそうですね(汗)

そうですね(笑)
あとは稼がねば!と思っていて。
家も車も買ってしまって子供もいるし(笑)
人は追い詰められたら、背水の陣ではないけれども、動きますね。

– 私も伝統的文化に馴染んでたらこんなに必死にやってきてないですね(笑)日本の旧態的な制度が自分の生き方に合わないと体感してから、そこから脱出する方法を考え続けて今に至っただけ。

ですね、やっぱり動き続けたいです。
その方が面白いし、自分の成長も感じられるし、新たなワクワクへの出会いもそこから生まれてくる。
会いたい人にも会えるようになってくる。

サラリーマンだったら自分の職位というものに自ら鎖をつけてしまうけれど、それがなくなった今、どんな人にも会いに行ける。
こんなに楽しい自由はありません。

– 素敵です!またお話させていただけたら嬉しいです。ありがとうございました!

終えてみて

志穂さん
貴重な機会をいただいてありがとうございます!
つらつらとお話させていただきましたが、サラリーマンを卒業するのに何年も足踏みしてモヤモヤした人。
同じように悩みを持つ人の背中を押すことができればと思います。

Nocchi
自分の前を歩かれている方のお話を伺えること、本当に感謝しかありません。
彼女のように自分らしく自由に生きられる方がもっと増えてほしいと思いますし、その土壌作りを自分もやりたいと改めて思いました。
ありがとうございました!

Profile

中村 志穂 / Shiho Nakamura

1983年、長野県下高井郡山ノ内町志賀高原生まれ。
2歳よりアルペンスキーを始め、米国のスキーアカデミーにオリンピックを目指し高校三年間留学。
コンチネンタルカップなど世界トップレベルのレースに参戦。
その後スキーを引退し、上智大学外国語学部に入学。

大学卒業後、10年以上にわたり世界最強の米投資銀行のアセット・マネジメント部門にて金融商品の営業およびマーケティング関連業務に従事。
マーケティング、プロジェクトマネジメント、事業拡大等に欠かせない人脈構築などに強みを持つ。
その後、金融および宇宙ベンチャーを経験後、志賀高原にて地域創生事業と旅館業に従事。

対談相手

Nocchi

N.FIELD代表、Polaris管理人。
大手金融、IT企業での副業社員を経て、現在は事業立上支援を行う。
副業社員時代に、「自分で人生のオーナーシップを採る生き方」普及のためにPolarisの運営を始め、自身が新しい働き方を体現しながら、多くの人の働き方相談に乗る。

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