Vol.11 – 三浦 信二 / 僕が”旅するエンジニア”になるまでとこれから

※内容は、2018年12月時点のものです。

Give and Take。
期待しすぎない。最後は自分の力で、解決するものだから。

いま

– 現状について教えてください。

フリーランスのWebアプリケーションエンジニアです。
フリーランスチームで2社掛け持ちしつつ、個人でも2件開発しています。

– 個人開発というのは何をされているのですか?

インフルエンザをチェックするアプリを開発しています。
病院で行われるインフルエンザの検査というのはさほど精度が高くないため、病院へ行ってもインフルエンザかどうかわからないことがあります。
それにインフルエンザかなと思って病院に行くと、インフルエンザじゃなくても周りの人からうつされてしまったり、インフルエンザの人は周りにうつしてしまうリスクがあります。
お医者さんもこの時期にはインフルエンザ患者にリソースがとられてしまい、本来診なければいけない患者さんまで手が回らなくなっているのが現状です。

インフルエンザに特異的な身体的な反応”インフルエンザ濾胞”というものが喉にできるということが最近わかるようになりまして、それが検知できればインフルだと判定できるようになりました。

[ インフルエンザ濾胞 ]

実はタミフルは海外では必要だとされていなくて、16時間ほど治療がはやくなるだけです。
知り合いの医師に聞いてみたところ、医師の中でも「わざわざ病院に行ってタミフルを貰うより市販の解熱薬を飲んで家で寝てたほうが楽だよ」という意見もあるみたいです。
しかし、タミフルの使用率は世界ベースでみると日本が大部分を占めているという状況です。

さらにインフルエンザの時に患者が感じるつらい症状を抑えているのは、実は一緒にもらう解熱剤だったりします。

このような情報を知らない方が多いため、開発したアプリではインフルエンザへの知識を得ていただくことでリテラシーを上げ、患者・医者ともに幸せになる世界を目指しています。

日本ではオンライン診療などの規制があるので、「診療・診断」の定義にに当てはまらず、法的に問題ないよう努力しています。
サービスはHPをご覧いただければと思います。

[ スマホでインフルチェック ]

– 実際にフリーランスを始めてみていかがですか。

いや〜…最高ですね!
時間とお金のコントロールが自分でできるのが、何より、いい。

以前は時間を売ってお金を得ていたのですが、
今はお金を捨てて時間を得るようになりました。
好きなことに手が出せるようになって、とても幸福度が上がったと感じています。

お金は大事です。でもあくまで手段だと思います。
自由、幸福を得るための手段。有効に使いたい。
目的と手段は入れ替わると不幸なことになります。
お金を稼ぐ力は大事です。
エンジニアという職種は稼ぎやすく自由で、日本でも特殊な職業だと思います。

– 1週間の流れを教えてください。

えーっ、毎週違うなぁ…
月曜から金曜はチームで受託開発をしていることが多いです。
空いた時間は個人開発をしたりイベントに参加したりすることが多いですね。

– 自由ですもんね(笑) 気分転換にしていること。

僕は同じところで仕事できないので、コワーキングスペースやカフェで仕事したりしています。
あとカラオケボックスでも仕事しています。
疲れたら歌えるのでいいですよ!
電源もモニターもフリードリンクに空調もあって防音完備です。
あとスーパー銭湯とか。休憩所で仕事ができます。
サウナが好きなので、気分転換にサウナ入ります。

– カラオケに銭湯(笑) お気に入りのツールは。

ハードウェアだと最近買い換えたAndroidがお気に入りです。
これまではずっとiPhoneだったのですが、Apple製品はインターフェースがだんだんわかりにくくなってきたなって。

[ Google Store – Pixel3 ]

選んだ理由はAndroidを作っているGoogleという会社が面白いなと。
Pixel1が出た時にカメラで撮った写真が白くぼやけてしまうリコールもののエラーがあったんですが、そんなハードのエラーをソフトウェアで写真を修正してしまったんですね。
そんなソフトウェアでハードウェアのエラーを殴れるメーカーって面白いなって。
Googleカレンダーなどウィジェットを追加してカスタマイズできるのも重宝しています。

[ 「Googleカメラ v4.2」のアップデート版が公開 ]

PCはLenovoのThinkPadを使っています。Macbook Proは捨てました(笑)
タッチバーとキーボードとバッテリーがどうしても許せなくて。
それに旅をすることが多いので変換アダプタとか別キーボードとかは重いので持ちたくないんです。
どうせPCで使うのはChromeとSlackとターミナルだけなのでLinuxを入れて使っています。
ThinkPad、軽くて丈夫で骨太でとてもいいPCですよ。

モバイルバッテリーはXiaomiを使ってます。
日本では売られていないですがAppleと無印良品を足して2で割ったようなメーカーで、保有しているガジェットはXiaomi製品が多いですね。ファンです。

[ Xiaomi Online Store ]

これまで

-子供時代、学生時代。

僕は母子家庭で生まれまして。
母親は夜の仕事をしていたので、生活時間帯も合わず。
寂しくて、友達の家庭によく遊びに行っていました。

小学校の時に一度転校して、人間関係がリセットされちゃって。
なのでこの頃はよくゲームをやってました。
絵を描くのが好きでドラクエのモンスターのイラストを描いてエニックスに送ったり(笑)

[ Square Enix – ドラゴンクエストシリーズ ]

学費を稼ぐために中学生の頃から清掃業者のバイトをしていました。
高校生の頃は清掃業者に加えコンビニのバイトを2つ追加。
ほとんど高校に行かなくなりぎりぎりでの卒業でした(笑)

高校を卒業してからは親戚の清掃会社で働くも、月給20万円との約束が月給2万円になって…
更に社長からサラ金で借金させられ、このままだと人生積む!と焦りました。
それで、原付と財布のみ持って夜逃げしたんですよね。

-なかなかドラマチックですねぇ(笑)

工場のライン作業を3箇所ぐらいするも、単調な仕事に飽きてすぐに辞めてしまいました。
ちょうどその頃、三重県がパチスロを導入したとのことで、三重県に通ってパチスロで稼ぐようになりました。
しかし車が大破して…足がなくなって、稼げなくなって。

そのままパチンコ屋の裏側が知りたくてパチンコ屋に就職しました。
ホテル並の接客指導を受け、接客スキルとコミュニケーションスキルが上がりましたね。
5年ほど働いて副店長までなりましたが、会社が倒産するとのことで退職。
地元に戻りました。

-5年で副店長って早い、のかな。キャバクラで接客学ぶのと近そう。

当時死ぬほどハマっていたオンラインTRPGがサービス終了となり、自分でサービスを継続させようとした時に聞いた言葉が、Java。
仕事、寝る以外はこれに時間を費やしていました(笑)

[TRGP – Heaven’s Gate] [ 開発言語 – Java ]

職業訓練校でJavaを学び、アプリ開発会社に入社。
アプリ開発会社でアプリを作るつもりで入社しましたが、アプリ開発部隊を食わせるためのSES部隊に配属されて。
(SES = System Engineering Service / 常駐型SE)

数年SESで技術を身につけるも、エンジニアの質が低かったり、待遇が悪かったりで危機感を覚えて。
営業と二人で会社を立ち上げ、自分は開発の責任者となりました。

エンジニアの楽園を目指したものの、社長の意思で結局SESとなって。
自分もSESで稼ぎながら未経験のアルバイト数名を新人研修で鍛えました。
激務と教育で睡眠時間が少なくなり、社長に利用されているのではと疑心暗鬼になり、鬱病にかかって…

休職して鬱病が治り復帰するも、このままだと苦しんで死ぬのではと思い退職。
上京しギークハウスに入居しました。

– おお、ここでギークハウスに。

[ エンジニアのためのシェアハウス – ギークハウスプロジェクト ]

一ヶ月だけ滞在する予定が楽しすぎて一ヶ月、また一ヶ月と延びて…
そのうちお金が無くなり、フリーランスとして仕事を請けるように。

ギークハウスの同居人と馬が合い、彼の会社が魅力的だったので入社して。
この頃から海外へ旅に出るようになりました。
一年近く勤めるも、自分を誘ってくれた同居人とアメリカに行くために退職。
フリーランスの友人と3人でアメリカに行って、そこから日本の仕事をフルリモートで請けながら旅をするスタイルが確立しました。

アメリカの他に中国の深セン、インドなどをぶらぶらしながらデジタルノマドワークしています。

[ デジタルノマドになりたいなら考えておくべきポイント集 ]

今年の技術書典5に「旅するエンジニア」という、デジタルノマドワーカー向けの同人誌を執筆しました。

[ 技術書典5で旅するエンジニアという本を頒布します ] [旅するエンジニア BOOTH]

– “旅するエンジニア”として、どのあたりに行かれたんですか?

台湾、中国は2箇所で上海と深セン。
アメリカが4箇所で、ロス、サンフランシスコ、ラスベガス、ニューヨーク。
シスコとNYがよかった。
シスコはスタートアップの聖地だし、meetupも盛ん。
日本人エンジニアにもたくさん出会えました。
NYは都会でアメリカ人ばかりで。自力を試される感が刺激的だった。

– いいですねぇ。子供の頃の夢は。

いろいろあったんだよなぁ…
プログラマではなかったですね。
競馬の騎手…でも背が高かったから無理だねと。

– なかなか珍しい。若い頃の自分に言いたいこと。

えーっ…難しいですねぇ…
ちゃんと自分のことを考えて、かな。
小さい頃の自分は自分を大事にしていなかった。自分のことも将来についても考えてなかった。
行きあたりばったりで、周りに流されているだけの人生。
死にながら生きているような…
きちんと向き合ってほしいかな。
まあ無理だろうけど(笑)

向き合えたのは最近…ここ10年くらいかな。
プログラマになってからですかね。
自分の価値を認識できるようになったのが
プログラミングスキルだったのかもしれないな。

価値観

– 三浦さんの幸せとは。

明日死んでもいいように生きる、かな。
後悔がないように生きるようにしている。

自分の価値を人に提供して、喜んでくれたらいい。
まずはGiveからだと思っています。それで他人が幸せになって自分に回ってくればいい。

-とても共感します。いま、5億円もらったらどうしますか。

5億円かぁ…え、100億円でもいい?(笑)

日本の地方を回って、プログラミングで課題解決していきたい。
例えば僕は、ギークハウスに入って人生が変わったんですね。
同じプログラマーでも消耗している人もいる。
同じフリーランスでも消耗している人もいる。
ぼくがロールモデルとなっていろんな選択肢を見せてあげたい。
地方の人はもっと東京へ来てほしいし、東京の人はもっと地方へ行ってほしい。

– 人生の転機というのはありますよね。やりたいこと、ほしいもの。

やりたいことは…旅するエンジニアを続けること。
今やろうとしているのは、Startup Weekendとかを通じて、ビジネスの種ができた時に、すぐ検証できる環境を提供していくこと。
自分が面白そうだなと感じたアイデアを爆速で提供したい。
全ての人にアジャイルを提供したい。

[ 起業支援プログラム – Startup Weekend ]

物欲は…減ったのかな。昔はもっとミーハーでした。
大きな家で犬を飼いたかった。
猫も好きなんですが、大型犬が好きなんですよ。
郵便配達のバイトをやっていたときに、犬を飼っている家があって。
ゴールデンレトリバーが可愛くてよく撫でていた。

やりたいことリストも立てていますよ。
今年一番目標にしていたことは…ここでは言えませんが、叶いました(笑)

– そうですねぇ(笑) やりたくないこと、嫌いなもの。

やりたくないことは、時間の切り売りですね。

僕は幼い頃数奇な体験をしてきたわけですが、
同じように辛い過去を生きてきた人が自分自身を非難したり卑下する人は苦手かな。
憐れみをうけたいとも思っていない。
過去に縛られるよりは未来を見ていたい。

– ちょっと路線が変わりますが、恋愛と結婚をどう思いますか。

まぁ僕は恋愛経験ってそんなになくて。
結婚も、両親が揃っていなかったから理想像がよくわからない。
お互いが尊敬しあえるパートナーがいてほしいなとは思う。

パートナーは昔いなくてもいいと思っていたけれど
ここ1-2年で変わったんです。
喜びを分かち合える人がいるといいなと感じるようになった。

– では、家族とは。

難しい、なぁ。夢のようなものだなぁ。
大きい家、大きい犬。幸せそうな家族。そんな偶像。
僕はきっと、夢の途中、なのかな(笑)

自己認知

– 自分を動物に例えてください。

犬ですね!
人懐っこいし、コミュニケーションも好き。
ご主人!ご主人!って感じ。

– 色。

青が好き。
理由は…空色。からっと晴れた感じ。

– 好きな色なんですね(笑) 暖色のイメージはあるかなぁ。国に例えて。

自由な感じ…でもアメリカ以外。
アメリカって自由な感じしないです。
昔だとドイツって答えていたと思います。
騎士とか規律が好きだったんですね。今はそこまで閉鎖的ではなくなってきたので。

-変わったのですね。ご趣味は。

コーヒーとパンケーキ、です!
一日三本缶コーヒーを飲んでいたんですが、美味しいコーヒーをお店で飲んで変わりました。

愛知県で、小さな珈琲店で飲んだ珈琲がとても美味しかったんですね。
まるでワインかリキュールのような…濃厚な。
それ以来、缶コーヒーが飲めなくなりました。
コーヒーは中学生くらいから飲んでました。周りに大人が多い環境だったから。
自分でドリップもしますが、最近は焙煎までやりだして、自分がイベント主催時にはコーヒードリップセットを持ち込んで参加者に提供してます。

お酒は弱くて飲めません。ウーロン茶で酔えるので問題ないです(笑)
煙草は好きだったんですが10年ほど前に辞めました。
神奈川県限定の「さくら」とか好きでしたね。
お酒飲めないのに葉巻にも手を出したりしていました。
趣向品が好きなんですね。

– 好きな映画。

映画あんまり見ないんですよね。
ヨーロッパ系が好きで、「英国王のスピーチ」はよかった。

[ 英国王のスピーチ ]

– 好きな音楽。

ロックとヒップホップ。
ボンジョヴィとかリンキンパークとか。
ライブとかはちょこちょこ行きます。
クラブもたまに付き合いで行きます。

作業用BGMにはカフェミュージックを聞くかな。
最近は、ブルーノマーズとエドシーランあたりを聞きますね。

これから

– これからの働き方。

先進国であれば、自分の好きなことを選べるようになるんじゃないかな。
選択肢が増えてくると思います。
新興国は結局日本やアメリカの後を追う働き方になるのではないかと。

– これからの日本。

ガラパゴスのままになるのではないかな。
外国人の受け入れも本格的にはできない気がする。
彼らにとってもそこまでいい環境ではなくなってきたし。

これからは世界で通用する力が必要、とよく言われるけど、それは日本だけの課題ではなくて世界規模で必要だと思う。

– 自分の老後。

想像つかないなぁ…
僕はもう後進の育成に入っているので
引き続きこれをやっていきたい。

僕は一つの解として「安楽死」を考えています。
安楽死なら家族に囲まれて幸せなまま苦しまずに死ぬことができる。
死ぬのを待たなくていい。
倫理の問題と言われるけれど、他人が人の命を奪うということではなくて、自分で命を選択できるようになってほしい。

– 同意です。導入されるといいですね。ありがとうございました。

Profile

三浦 信二 / Shinji Miura
1980年生まれ。愛知県出身。

学生の頃から様々な職を経て2007年からプログラマの道へ。
大手企業へ常駐する業務系SEを経て、2016年よりフリーランスのWebアプリケーションエンジニアとして活動開始。
現在は3人のフリーランスチームで活動しつつ、個人でも仕事を請けたり趣味で個人開発をしている。
国内・海外を問わず好きな場所で好きに仕事するデジタルノマドワーカー。

面白いアイデアには飛びつき検証することが好き。
不幸なプログラマを救うべく、ギークハウスを布教したり時には退職や別の道をいっしょに模索したりしている。

またコミュニティ活動として『Startup Weekend』のオーガナイザーや『旅するエンジニア(Nomadineers)』の運営も行う。