Vol.31 – 藤井 伸雄 / 日本とアジアのQOLを上げるため、監査法人を辞めてMBAに行き、”IQOLA”を創業した話

※2019年3月時点のものです

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life.
~ Steve Jobs ~

金融を学び、監査法人に入った藤井さん。
アジアで働く経験を経て、アジアのQuality of Lifeを向上したいと強く思ったと言います。

その時の思いを行動に変え、シンガポールでのMBAを経て、現在は起業をされた彼。
アジアのMBAが気になっている方や、アジアで事業を行うことに関心がある方にぜひお読みいただきたいお話。

いま

– 今、やっていることを教えてください。

筋トレです!え、違う?(笑)
外資系企業の日本事業立ち上げやマーケティングを支援する会社を運営しています。
マーケティングがメインといいつつ、会社設立・ビザ取得からM&Aまで、外資系企業による日本ビジネスの困りごとなら大半のことはサポートしています。

[ IQOLA – Your BusinessPartner in Japan ]

– 顧客はどういったお会社が多いのでしょう。

アメリカ、中国、香港、シンガポールなど。
業界としてはIT企業や金融が中心ですね。
規模は中小企業もあれば、ユニコーンクラスや上場直前のところなども。

– 仕事は全て英語なのですか?

基本的には英語と中国語ですね。
中国語は上海に4-5か月くらいMBAの交換留学で滞在していたので、そこで勉強をしていました。

MBA自体はシンガポールの学校なのですが、シンガポール滞在中から中国語の勉強を始めました。
とはいえ、まだまだ焦りながらですが(笑)

– 海外とのやり取りをしつつ少人数経営なんですよね、なかなか大変そうです。

はい、基本は1人経営で、数名業務委託でサポートに入っていただいています。

– メンバーをどのように見つけているか?

基本は自分の人脈の中からです。

– この事業をやろうと思ったきっかけは。

いくつかあるのですが…
得意な外国語を使った仕事をしたかった。
ビジネスで誰を幸せにしたいか考えたところ、外国人(外資系企業)だった。

外貨を稼ぎたかった。
外から稼いだお金を日本の皆様に配りたかった。
そうすることで、日本の経済を少しでも活性化できるのではないかと。

– 素晴らしいですね。顧客はどうやって獲得しているのですか?

基本、紹介ですね。
MBAにいたころの知り合い経由が多いですが、経営者の友人経由もあります。
あとは、普通にHPに問い合わせがきて、ですね。

– MBAの人脈が活きていますね。行こうと思われたきっかけは。

元々インドネシアで働いていた時期があって。
そこで、アジアのマーケティングをもっと学びたいと思ったんです。
学ぶにはMBA、そしてアジア。

その中心にあるシンガポールにしようと。
香港や上海も選択肢に上げられるのでしょうけども、当時はシンガポールしか見えていませんでしたね。

– MBAに行かれてみていかがでしたか。

良かったです。3点あって。
1つ目は、自信がついた。厳しい立場に立たされても怖じけない胆力を持つことが出来た。
2つ目がアジアの人脈。人脈経由で仕事が入ってくるようになった。
3つ目は語学力。英語と中国語。

– MBAを人に勧めますか?

アジアをフィールドにして仕事をしていきたい人にとっては、シンガポールのMBAはとても良いと思います。欧米系よりも安いですし。

実は、4月に一般社団法人アジア留学協会の設立も予定していて。
今までは欧米に留学するのが当たり前でしたが、21世紀の経済の中心アジアで学び、アジアでビジネスする”アジアビジネス人材”を輩出したいと思い、アジアMBA卒業生と始めました。

[ Asia Study ]

– まさに、自分の体験が仕事になるというモデルケースですね。

これまで

– 子供時代、学生時代。

父親が花屋を経営していて。
自分も子供時代から手伝っていたので、起業するのだという気はずっとありました。

父が自由に働き、自由に稼ぐ姿を見ていたから、きっと俺もああなろうと思って追いかけてきた節はある。

– 性格はいかがでした?今は明るく面白いキャラクターという印象がありますが…

僕は内向的だったんですよね。
小学校から中学まで、どちらかというといじめられっこで。
なんか、ジャイアンみたいなのに目をつけられていた、のかな。

今、筋トレに励んでいるのも、強くなければという気持ちが、強く、原体験として残っている気がします。

– その頃、変わりたいと思っていました?

思っていたのではないかな。
自分らしさが発揮できなくて悔しさみたいなのは、あった気がする。

でも手段はわからなかったですね。
柔道とかやっていれば変わったのかな。僕は野球少年でしたけどね。

– 習い事とかはしていました?

そろばんをしていた気がします。
あまり記憶がないのですよね、子供のころの。
ジャイアンに勝つために勉強は頑張ろうとしていた記憶があります。
成績はある程度よかったですね。

– いじめられっこからの転機はあったのでしょうか。

いわゆる高校デビューみたいな華々しい転機というのは、訪れなくて…
野球が強くなったとか、身体が大きくなったとか、先生の介入があったのか…
いじめっこからの攻撃は中2くらいで止まったんです。

高校に入ってからは、体育祭の応援団長みたいなのをやっていた記憶はあります。
だから、徐々にリーダー的ポジションも意識するようになっていた…のかな。

– 大学受験の時はいかがでした?

勉強して、なんとか横浜国立大学へ。
経済学部でした。
僕は出身が兵庫県の丹波なのですが、田舎を出たかったという気持ちもありました。

なぜ横国か…?あ、教育がやりたかったとかではないんです。
京大とか大阪大学とか、関関同立はみんな行っていたから。
人と違うことをしたくて、関東を選んだというのはあります。

– 大学生活はいかがでしたか。

あんまり行っていないんですよね、実は。
公認会計士になろうと思って、予備校によく行っていたので…

– なぜ公認会計士になろうと?

起業するにも、父が会計の知識がないのを見てきたから、僕は勉強しよう!と思っていたら、意外にもハマってしまって。
当時は会計が面白いと思っていましたね。
勉強ができる自信もあったから、強みになるかなとも思っていた。

– バイトはしていました?

ビジネスホテルで受付をしていました。
え、理由?先輩から勧められたのと、楽だったから…
1人暮らしをしていたので、基本バイトでなんとかしなきゃと。
自炊もしっかりして、節約していましたね。

– 就活はどうでしたか。

公認会計士の二次試験が終わったら、監査法人数社に応募して、すぐ内定が出て。
その中の中堅のところを選びました。
なので、その他の業態の会社の就活はしていないですね。

– その、中堅の先に決めた理由は。

大手だと人が多くて、経験を積むのに時間がかかると思って。
人が少ない方が早く経験が積めるのではないかなと。

– その時、既に起業を決意していました?

いえ、そこまでは…
まずは2年の実務経験がないと登録できないので、初期は実務に目が行っていましたね。

– 資格が取得できてからはどうなりました?

会計だけでは事業が創れないのだと気づいて…
そのころ懇意にしていたベンチャーの社長に誘われて、データ解析の会社に行くことにして。
その流れでジャカルタに赴任し、そこでさらにアジアマーケティングを学びたくなってシンガポールのMBAに行ったという流れです。

– 子供のころになりたかったものはありますか?

あったのかなぁ…
覚えていないですね。

– 海外で働くことに憧れはありましたか。

あ、これはね、原体験があるんです。
監査法人に入る前に、NYへ語学留学に行って、ホームステイをしたんです。
NYは本当に人種のるつぼで…世界って広いんだという、衝撃。
人生が360度変わった瞬間でした。

日本に帰ってきても、ああいう多様性のある世界で働いていたいという気持ちがありました。

– 私もそうだったし、Vol.2の日置さんも同じことを言っていましたね。NYすごいなぁ…。

[ Vol.2 – 日置 愛 / 1週間ルームシェアweeeksで”住”の当たり前を再定義 ]

– 現在は日本を拠点にされていますが、今後は世界を舞台にしたいと思われますか。

世界を舞台にして活躍したいですが、しばらくは日本を拠点にしたいと思います。
今後どこに住むかは仕事の内容次第で柔軟に考えたいですね。

価値観


– いま、一番情熱を注いでいること。

難しいですね…
帰国してすぐ起業したし、子供もいて…
出来ること、やるべきこと、やりたいこと、それがすごく混ざっている状態なんです。

僕はアジアに長くいて、アジアのQuality of Lifeを向上させたいという気持ちがすごく強い。
僕は自分のミッションはそれだと思っている。
社名のIQOLA(Improve the Quality of Life in Asia)もそこから来ているのです。

外貨を稼いで日本経済に貢献することは、今、微々たるものですができている。
一方で、”IQOLA”のミッションは達成できていない。

それに、今はコンサル事業で…
コンサルって、人の土俵で仕事をしているわけで。
自社でプロダクトを創りたいという気持ちはとても強いです。

– これはすごくわかります。プレイヤーでいたい、いなければという気持ち。

今の事業で家族を養うことはなんとか出来ている。
自由に働くことも、できるようになった…。
父親という昔の自分が憧れていた場所には、多分立てた。

でも、それでいいのだろうか。
僕はミッションというものに対しては、どれくらい達成ができているのだろう。

– わかります…日銭を稼ぐための事業って、初期は気持ち悪さがありますよね。

そうなんです…
自分の自由を獲得できたら、次のフェーズはもっとビジョナリーでなければと…

– そうですね。どこか不本意で…志高くありたいと、常に願うというか。どうなったらゴールなのでしょうね。

今は所謂、ステーブルな事業をしていて…
でも、次はスケーラブルな事業をしたいなと。
海外展開はずっと意識していて、できればアジアを変えていけたらと。

人と同じことをやるのが苦痛。
自分の周りは、日本企業の海外進出をやっていて。
なので、あえて逆の海外企業の日本進出を手がけた。

– 多分…藤井さんは…深層心理的には日本市場をターゲットにしていない、ですね?

はい…そうだと、思う。
僕でなければ、できないことを探している。
人と違うことをする…それは未知の領域。
すなわち、リスクを取るということ。

– どの国や民族を救いたい、というアタリはありますか?

アジア全体を助けたいという気持ちはあります。
合う合わないは、国によってもちろん、ありますが…
インドネシアに住んでいた頃、ベトナム、タイ、ミャンマーに頻繁に行きましたが、あの辺りは入りやすいのかなと。
インドネシアはむしろ大手でないと厳しそうという肌感ですね。

– 東南アジアはまだペインが山のようにありますが、どこから手を付けましょうかね。

そう、それが悩みなんですよね…
MBAの同期とそこをディスカッションする会を設けていたりはしています。
地方行脚してみようか、だとか。
出張の帰りに近隣の国に寄ってみようか、だとか。

– チャレンジングで素敵です。一方で、まだお子様が小さいですよね。子育てもしながら仕事をして…育児について思うことはありますか?

もうね、すっごい、可愛いですね…
業種的にWork Anywhere, Anytimeができるので、今の働き方ってすごく子育てに向いていると思っていて。
結構、子供を見てあげられる時間もありますし、そもそも家で仕事ができるので。
特に最初の1年は子供と一緒にいられたのはとてもよかった。

来年から保育園に入るんですけどね。
でもちょうどよかったのかな。
自分の時間を取ることもしやすくなるので。

– 良いですね。これからの人たちは、これくらい自然に…性別関係なく、子育てに触れてほしい。効率化が大事になると思いますが、お気に入りのサービスはありますか?

うーん、ベタですけどSkyscanner。
Expediaより安いですね、フライト検索もわかりやすい。

[ Skyscanner ]

おすすめの本、映画…う~ん、ぱっと出てこないなぁ…
あ、『筋トレが最高のソリューションである』、これはいいですよ!MBA時代に読んで筋トレ信者になりましたw

[ 筋トレが最高のソリューションである ]

– 筋トレお好きなんですねぇ…フライトといえば、フライト中ってどうされています?

あ、仕事してますね…アイデア出してメモ帳に貯めたり。
ネットから遮断されている分、アイデア出しとか振り返りにはちょうどいいんですよね。
Wi-Fiも使えますけど、オフラインになる貴重な時間でもあるので、あえてブレストに使っているかな。

– わかるなぁ、私も機内でGoogle Docksフル活用してますね。

これから

– いま5億円もらったらどうしますか。

半分はアジアのスタートアップにエンジェル投資をする。
IQOLAのミッションとして、アジア消費者のQOLを上げる手段として、アジアのイノベーションを進める手助けをしたいと思います。
残りはNPOに寄付したり、家族のために使うかな。

– これは額が大きくなっても比率は変わらない?

変わらない…と思います。
寄付は、自分のミッションに適うところに。

– 今年やりたいこと。

スケーラブルな事業。攻めたい。
上半期中に方向性を決めて、下半期からプロダクト構築と資金調達を進めたい。
年内は…まず新会社の設立、ですかね。

– ベーシックインカムはどう確保されています?

IQOLAでの収入があるのでなんとか…
このリソースをもっと新会社に移していきたいですね。

– これからの働き方は、どうなっていくと思いますか。

公私混同。
ワークライフインテグレーション。
Work Anywhere, Anytime。
仕事とプライベートの境目を無くすとむしろストレスが溜まらないと感じています。

– 良いですね!私もそのタイプなので共感です。

僕は仕事とプライベートをいい感じに融合していきたいと思う。
お金のためだけに仕事をするという概念に限界が来ているように見えます。
そんな人生、つらすぎるでしょう。

– そうですね!これからの日本をどう思いますか。

はい、ここは結構考えたことがあって…
先代の遺産というものを享受した代だと思うから、何かを貢献したいという気持ちは強いんですね。
だから、外貨を稼いで、というこのモデルは、そこにモチベーションがある。

ただ、迷いました。そのやり方を…。
今、日本をよくするための方法はきっと色々あるのでしょう。
スタートアップの文脈でいけば、業務効率化なのでしょう。
でも僕は自分にそこの適性を感じなかったから、それを選ばなかった。

– 日本の課題とはなんなのでしょうね。

難しいな…色々ありますよね…
グローバル性が低い、生産性が低い。

よく言われているのは、国内市場が十分に大きくて、外に目が向かなかったということですね。
比較対象としては韓国が挙げられるのですが、彼らは国内市場が小さかったから輸出を頑張った。

あとは、日本は生産性が低くても、まじめだから、ただ単純に長く働けばなんとかなった。

– 時間の重要性とか効率性を意識している人がすごく少ないですよね。

ああ、そうそう。
働けばカバーできるからいいじゃんという歴史に見える。

– 残業制度の弊害かもしれませんね。

そうですね、あとは解雇規制か。
生き残れることが保証されていたら、そりゃあ、頑張らないでしょうね。

– ああ、そうですよね。やはり正社員制度の見直しだなぁ…鍵は。

その流れで、副業制度とかが生まれてきているのでしょうけどね。
効率が上がっていないのに労働時間が削減されると単純にアウトプットが減少するので、そうすると国力は落ちる気がする…そこは危惧していますね。
日本に限りませんが、IQOLAのミッションを掲げて、今後も国力活性に貢献して行ければと思っています。

– 応援しています!ありがとうございました。

終えてみて

藤井さん

普段考えていたことをアウトプットできる機会ができてとてもうれしく思います。
働き方改革が進む日本で、私の事例がなにかしらの参考になれば幸いです。

Nocchi

Startup Weekendのオーガナイザーとして2年近い付き合いになる藤井さん。
シンガポールに行かれる前からの知り合いですが、帰国・起業後のお話を改めて伺えてよかったです!
引き続き応援しています。

Profile

藤井伸雄 / Nobuo Fujii
IQOLA Inc. Managing Director

公認会計士。横浜国立大学卒業後、監査法人に入所。会計監査・財務コンサルティング業務に従事するも、会計スキルだけでは事業は創れないと思い、マーケティング・コンサルティング会社に転職。
東南アジア各国で消費者リサーチ業務に従事する傍ら、ジャカルタで東南アジアを統括する業務拠点の構築に主要メンバーとして参画。
在学中はアジアMBAに特化したメディア「Asia de MBA」編集長としてアジアMBAの魅力を発信。
2018年に外資系企業の日本事業立ち上げ・マーケティングを支援するIQOLA Inc.の代表取締役に就任。

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