Vol.21 – 上村 遥子 / DMM.make AKIBAのコミュニティ・マネジャーが展望するIoTの可能性

※内容は2019年2月のものです

Happiness depends upon ourselves
幸せかどうかは、自分次第である

DMM.make AKIBAでコミュニティ・マネジャーをされる上村さん。
現在が4社目の彼女は、Web、ゲーム、採用という経歴の中で、自身のガジェットへの興味からIoTの世界を選びます。

いま

– 今やってらっしゃることについて教えてください。

2016年2月頃からDMM.make AKIBAのコミュニティ・マネジャーをしています。
それまではIT企業の広告、人材などをやっていました。

[ ハードウェア・コワーキング – DMM.make AKIBA ]

– DMM.make AKIBA、楽しそうですよね!

うちは、社会人、学生(高校生以上)、スタートアップ、大企業…
誰でも入居できます。
ものづくりを実装して社会の役に立っていきたいという人たちを支援していくという場所ですね。

– いま入居者さんはどれくらいいらっしゃるのですか?

ドロップインの方もふくめて、累計で17,800人以上の方に使って頂いてます。
企業数でいくと400社くらい。割合としては、100社弱がスタートアップ、それ以外が中小・大企業です。
でもスタートアップは伸び悩んでますね。

– え!そうなのですか!?

そうなんですよ。
やっぱり量産の壁や資金の問題から母数がなかなか増えないですし、DMM.make AKIBAを拠点にする意味がないと入居自体も大きく増えることはないですよね。

– 実際にアキバにあることで、IoT事業の利点は増えるのでしょうか。

あるでしょうね。
秋葉原、今はカルチャーミックスの街になっていますが、昔は電子部品パーツの街で、女性はまぁまず行かない場所でした(笑)

プロトタイプのスピードが問われるIoT事業で、パーツを買いに行くのにいちいち色んな場所に行くのってすごくタイムロス。
秋葉原は情報もモノも調達しやすい場所ですね。

私は、コミュマネとして、普段施設にいるだけでは会えない人たちをマッチングしたりします。

– 人気な職ながら、どういう職務内容なのか知りたいと私もよく聞かれるのですけれど…実際いかがですか?

フロント業は施設の運営スタッフの子がやっています。
私は施設にいて、様々なコミュニケーションハブになる役割。
会員さんとお話しして、何に悩んでいるのかを聞いて、
その悩みを解消できる相手を紹介したりします。

コミュマネは複数いるべきと思います。
なぜなら、私と合わなかったら、それだけでその施設とは合わないってことになってしまうから。
そうすると機会損失なので、色んなコミュマネがいたほうがいいですね。

– 引き合わせようとする方々は上村さんご自身が呼んでらっしゃるんですか?

いやっ…それが、呼びに行かなくても、いらっしゃるのです…!(笑)

DMM.make AKIBAは積極的に広告を打ったりしているわけではないんですよ。
入居者自体がインフルエンサーになっていて、そこから拡大するイメージ。

どんどんお問い合わせもあるし、会員さんがおすすめしてくださったり。
スタートアップ、VC、学校の先生、自治体や政府…
海外の政府からも問い合わせが来たりしますよ。

– 生の声、勉強になります。実際にコミュマネをされてみていかがですか?

私はコミュマネ歴が多分長い方で…
最近は様々なコワーキングが増えてきたので、コミュマネの人口も増えてきていて、
私は特に何かをまとめているわけではないんですが、様々なところから、「上村さんのところに聴きに行け」と色んな方からお問い合わせがあったりしました。

– コミュマネの適性となると、どんなものが挙げられそうでしょうか。

やっぱり第一に人との交流が好きなことが大事ですね。

例えばPlug and Playはアクセラレータをやっている。結果の期限がある。
Startup Hub Tokyoはインキュベーション施設である。
各コミュニティの目的を達成するために何をするかはやっぱり変わってくるのかなと。

[ Plug and Play Japan ] [ 東京都の運営するコワーキング – Startup Hub Tokyo ]

言語化するのは難しいですね。

– ご自身はコミュマネという職はお好きですか?

あ、もう天職だと思ってます!
それまで全然知らなかった職で、DMMに入った時も「コミュニケーション・マネジャー」(※初期の役職名)をしてくれと言われて、なんじゃそりゃと思ったものです(笑)

Web広告代理店の時から、アドテクはどんどん進化していって面白くて。
ITのスピード感にまみれていたので、技術、メディアとかが集まって、やろう!ってなったらすぐ走る。
オフラインで、コミュニティという媒体を介して、色んな提案して色んなモノが生まれていく、その過程に寄り添えて、なんて面白いんだと思いました。

これまで

– 子供時代、学生時代。

ボーイッシュでしたね〜…
男の子とばっかり遊んでました!
兄の影響が大きいのかなと。

ぬいぐるみは好きなんですけどね!
女の子と断絶しているわけでもないんです、絶妙なポジション。

– わかります!私もゲーム大好きで少年漫画中心に読んでいましたが、お人形遊びだとか、お手紙交換だとか、女子っぽいのもやってましたね(笑)

似てますね(笑) 私も中学の間はゲームとアニメ大好きで…
それまでミニバスやってたんですけど、結構ガチなところで、心が折れ(笑)
美術部に入りました。

– えっ!ミニバスはかなりイメージあいますが、美術部は意外…

ね。絵が好きなんです、わたし。
高校は洋楽系アイドルにはまって…
BSB(Back Street Boys)とかアヴリル=ラヴィーンとかですね。

– (完全に同世代だな〜…)

そこから高校はダンスにはまって。
おしゃれにも目覚めて。PVとか見まくって。
大学でもダンスをやってました。

– 大学では何を専攻されていたのですか?

フランス文学部でした。
ゲーム、アニオタ、ダンサーからのフランスっていう(笑)

私、ハマっちゃうとのめり込んでしまう性格だという自覚が、大学でやっと出てきて。
ダンスやってると、お勉強しないなって…(笑)
そのあたりから勉強しようと、クラブ活動は控えるようになりました。

– フランスは、何か所縁(ゆかり)が?

母がベトナム系フランス人なんです。
彼女との会話はフランス語なので、そこですね。
私自身も英語よりもフランス語の方が得意なので、何か使えたらと。

ただワインとかはそんな興味なくて(笑)飲むのは好きですが、いわゆるフランスといえば!という文化的なところにはあまり….。
むしろフランスで居酒屋開きたいな〜みたいな…
異文化を混ぜる、カルチャーミックスをやりたくて。

欧州は各自の料理を頼んで上品に食事する。
日本の居酒屋って、小皿で頼みまくってみんなでわーっと盛り上がって食べる。
フランスにこれ持ち込んだら面白いなって。

– いいですね。確かご自身のご結婚も国際結婚でしたね。

はい、旦那さんがスイス人なので、スイスで何かやれたらいいなと。
駅弁を欧州で広められたらいいなとか思っています。

– 楽しそうですね。社会人になってからは、どのようなご経歴で。

会社は現在4社目です。

1社目はWeb広告代理店でした。
当時、まだiphoneがで始めた頃で、スマホはまだオタクの持ち物だった。
でも、あれを見て私は、もう絶対これが当たり前になる時代が来るから、スマホ広告をやるべきだ!と主張したんですが、自分のスピードと熱量がまえのめりすぎて、タイミングあわなかったという感じですかね。

飛び出したんですね。
そしたら時代はソシャゲ最盛期で、モバイルに強い代理店などがブイブイ言わせていた。
2社目はモバイルに強い代理店で挑戦をはじめました。
でもそのうち、私は代理店の経歴だから、プロダクトを広報していくという点の視点ばかりで、そもそものお客さんのバリューチェーンをよく理解していなかった。業界がどう儲けているかわからないと、本来どう広告を打ってあげれば最適化になるかわからないということも思い始めた。

あとソシャゲ疲れがあって…(笑)
私は幼少期からゲームが大好きなのですが、いわゆるコンシューマ型が中心。

でもソシャゲって、金をもぎ取るゲームなんですよ。
新エピソード、SSR(SSレア)…
ゲームが大好きだからこそ、自分の中で葛藤があった。
そして同じモデルが通用するような息が長い業界でもないと思った。

やがて転職し、3社目はソーシャルリクルーティング(現・PORT)というベンチャーで、SNSで採用をする会社へ行きました。
会社自身がどういう構造を持っていて、どういう人材が欲しいかということを理解して、提案していく仕事。

点視点でなく、線視点を持てるように業界構造を理解したいという自分のニーズにもあってた。
のっちさんて26歳くらい?

– いや、もう全然超えてますよ(笑) 最近このやりとり本当に多いなぁ…(苦笑)

えっ、同い年!?あ、じゃあ話が早くてよかった…(笑)
私たちの時代って、新卒採用がリクナビやマイナビの大手プラットフォームのホームページに頼る時代だったじゃないですか。

それを、TwitterやFacebookで、お客さんの各社のストーリーやビジョンを元に、直接求人につながるような広告やイベントを打っていく仕事をしていました。新興勢力感でてて面白かったです。
ベンチャーあるあるですが、方針や優先事業のうごきなど変化もあるタイミングで、私も30歳に入る歳だったから、もう少し落ち着こうかなと思って、DMMに転職しました。

転職の時、一つ、私の中にあったワードが”IoT”だった。
だから、DMM.make AKIBAを見た時に感動したんです。

3Dプリンター、レーザーカッターをみて、PCあるだけでモノ作れるじゃん!と。
1週間前に3D CAD覚えた人でもモノ作れるじゃん!って(笑)革命的!

[ 3D CAD Software ]

その上、企画や営業のスキルも活かせる。
イベントで話すというのは仕事ではあまりなかったんですが、慣れているから特にためらいもなかったというか。

– わかる(笑) 社外活動で、もはや体に馴染んでますよね…

そうそう、だからどんどん増えてった感じですね。
自分は多分デジタルオタクで。テクノロジー追っかけるのが好きで、今の仕事は本当に合っています。

価値観

– いま、一番、情熱を捧げられること。

家族とかももちろん大事ながら、仕事は最高に楽しいです!
IoTを軸に、日本横断で色々な人を繋げていけるのはとても嬉しい。

例えば、自動車業界。
電気自動車が普及すると、なくなる仕事って実は結構あるんですよ。
いらなくなる部品が出てくるから。

-なるほど…現場の製造担当は怖いでしょうね〜…

そうすると、彼らのための新しい仕事を創出する必要がある。
企業も動いているし、自治体も動いているんですね。
でも、新しいことやるぞーって企画ができる人というのがなかなかいない。
今までは、そもそも製造業界って作るモノが決まっていて、それに従うものですしね。

そういう時、彼らに一番わかりやすいイノベーションがIoTだと思います。
きっとAIの話してもポカーンだと思うんですが、IoTってものづくりの延長上につながるから、馴染みがあるわけです。

– なるほどなるほど。馴染みある業界のイノベーションから仕事をシフトしていくというわけですね。これはワークシフトの観点からもすごくいい方法に見えますね〜!

私はこのことが、すごくワクワクする。
新しい世界を見せる、連れて行くこと。
自分のやってきたことが、イノベーションの役に立つって教えること。

これをいつか、海外に繋げられたらって思います。
海外の血は混ざっているけれど、私のアイデンティティとしては日本人なので、日本のよさを海外に伝えていきたい。
ものづくり大国日本の元気をもう一度取り戻したいと思っています。

– IoTの汎用性はかなり高いですが、いま手を入れたい産業というのはありますか?

漁業IoTですね!
農業は結構IoT入ってきてるんですけど、漁業ってすごくITが進んでない。

でも、魚ってみんな好き。
外国人もお寿司大好き。
新鮮に食べる方法、缶詰にする方法、干物にする方法。
日本って、魚を美味しく食べる方法をたくさん知っていて、これって今ものすごく求められているんです。

– これは実際に.makeさんにプレイヤーがいらっしゃる?

いやっ、いないんですよ!
水中ドローンの方はちらりといらっしゃるんですけど…
そもそも大変なことなので着手しようとする人が少ないんですよね…

こないだ、マグロを漁獲する漁師さんのドキュメンタリーをやっていて。
1Kg1万円くらいで売れるので、大きいのを釣れると儲かるわけです。
すしざんまいとかに買ってもらえたら億円単位がついたりする。

[ すしざんまい ]

でも、漁獲は70才近くの高齢のおじいちゃんがやってるところもあるです。
体力もやばいのに、1ヶ月に1本も釣れなくなっている。
生活がかかってくるのに、ITの知見があるわけではないから、装備も今までのもの。

でも、これを見て私が思ったのは、おじいちゃんにしかわからない、波のや海の状況空読んでいる知見って、求めている人が多いわけだから、きっとお金になるはずだと。

– もうおじいちゃんにビザスクやってほしい…(笑)

そう!そうなんですよ!(笑)
顧問とかで十分生きていけるから!って思う!

[ ビザスク – スポットコンサルティング ]

– シニア世代の仕事の作り方って、私もすごく気になってて。私たちも、あと20年もしたら老害になっちゃうわけですので(笑)

自分たちが言ってきた分、そっち側に回るのは怖いですよね(笑)
だからこそ、自分が日本で色んなものをつないでいく役目を担っていきたい。

– そうですね。プライベートですと、趣味、好きなことなどは。

学生時代は一つのことにブワーってハマってたんですが、社会人になってからは、様々なことに手を出すことが好きで。
サバゲーとアーチェリーハンドが好き…

– サバゲーは私もやりますが…アーチェリー…なんて?(笑)

これ、見て(笑)

[ 弓矢 x サバゲー x ドッジボール – アーチェリーハント ]

– えっ難しそう…!(←運動音痴) …弓道部とかは得意なのですかね〜これ…

そうかも。あとボドゲとか。
企画が好きなのかなぁ…昔は合コン企画とかよくやってたしなぁ。

[ ボドゲーマ – ボードゲームの総合情報サイト ]

– 興味が湧くモノの共通点って何ですか?(笑)

あはは(笑)。
んー、なんなのかなぁ…

– ん…流行ってないモノ、新しいモノ…未体験のもの、なんですかねぇ…

それはあるかもしれません。
体験したことがないものを評論するということが昔から嫌いで。
なんでもやってみようと思うから、東京というのは新しいことにあふれていて、本当にいい街だなって思います。

– 一次情報で生きていくというのは、私も心がけています。ちなみに、自分とコミュニティの関わり方って、どういうポジションが、一番しっくりきますか?

うーん…サポーター…ですかねぇ…
惜しみないサポートできっかけを与えられるような存在でいたい。
伴走者ってほど、がっつりどっぷりでもないしなぁ…

– それは、家族や旦那さんに対しても同じ?

そうですね。
彼らの気づきになるのではないかと思う情報を与えてみたり、一緒に体験したりとか、そういうことをしています。

– 素敵なご関係ですね。

これから

– いま5億円もらったらどうしますか。

DMM.make AKIBA機材を別のところで揃えるかな…(笑)

– もー、事業家だなぁ…(笑)

5億円なくてもできるけど(笑)
お金が潤沢にあればどうするかという意味でいけば、さっき自分がやりたいと言っていた、日本と海外をつないでいくということをやりたい。

秋葉原だけにとらわれず、そこから拡張して。
何かのKPIを追うということから離れて…つまりは会社という組織から離れて、日本全国のコミュニティにヒアリングをしていく旅をしたい。

どこのコミュニティがどんなことに困っているかというのを自分の目で見たい。

あと、私は東京を早く出たくて。
家族ができたので、次にこれから子育てをするなら、自然が残っているところにいきたいです。

子供達には山や海などの近くで、不便さ、大変さがまだ残る生き方を知っていてほしいなと思っていて。
しかしながら、都心離れた地方に行きたいけれど、東京育ちだから土地勘がなくて。

– あ、ではご夫婦共に、どこでも仕事ができるのですね。

彼はデザイナーなので多分大丈夫…
私は5億円あればっていうところですかね(笑)
それでも、今までやってきたことを全力発揮していくことはできると思うから、どうとでもなると思っています。

– 5億円なかったら、これからどうしたいですか?(笑)

げ、現実路線(笑)
どのみち東京は出たい、かな。
地方にいっても稼げる自分のスキルの可視化がどのみち必要なのだと思います。

– 副業はできる状態なのです?

最近できるようになったんですよね、うち。
いくつかルールはあるんですが…
本業が忙しくなりそうではありますが、色々と今年は挑戦できればと思っています!

– 色々一緒にやれるといいですね!ありがとうございました。

終えてみて

上村さん

自分が今までやってきたことを短時間で言語化して整理していくというのはなかなかないので勉強になりました…!
私、書き溜めたいことだけ書く日記というのがあるんですけど(笑)、こういう機会があると振り返ることができるからいいですね。
いつも色んなきっかけをありがとう!

Nocchi

Startup Weekendをきっかけにお話してから、WeWorkの六本木にも来て頂いたり、女子会したりと、色々とお話させていただいていた上村さんですが、改めて伺えて楽しかったです!
IT女子なんだろうなぁとは思っていましたが、漁業のお話とかが飛び出してきて、本当に色々なことに興味を持ってらっしゃるのだろうなと。
引き続きよろしくお願いいたします!

Profile

DMM.make AKIBA
コミュニティマネージャー/エヴァンジェリスト
1986年生まれ 上村遥子

デジタルマーケティングの企画営業でキャリアをスタートし、銀行などの金融業界からゲーム業界まで幅広く担当。2016年より、IoTの世界に踏み込み、現職DMM.make AKIBAでは、コミュニティマネージャーとして、スタートアップコミュニティの活性に奔走中。また、IoT女子会の企画運営にも携わり、IoTスタートアップのリアルを伝えるエバンジェリストとしても活動中。施設では仏語圏案件担当でもある。