Vol.53 – 磯部一郎 / 大病を患う僕がパラレルキャリアの道を選んだ理由

人形町の芸者のお家で生まれ育った磯部さん。
会社員として就職するも、26歳で独立の道へ。
順調に見えたその道の途中で、ガンの罹患が発覚。
苦難にもめげず、最近は複数の事業を興しながら、社会起業家として活動しています。

この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。
最も頭のいいものか。そうでもない。
それは、変化に対応できる生き物だ
– チャールズ・ダーウィン

いま


– 磯部さん、今なさっていることを伺えますか。

株式会社エグゼクションというシステム開発会社の会長。

Wander to Wonder株式会社というwebメディア運用の会社の代表。

株式会社福水戸家の代表。

立ち上げ中のパラレルキャリアマネジメント協会の代表理事。

2020年9月から本格開始するのですが、株式会社一(いち)という会社もたちあげました。

-一郎の一ですか?

それもありますが(笑)、ゼロイチ、一粒万倍の一の意味を込めています。
事業内容としては、プラットフォームの会社になります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング業務もやっているので、他社サービスだけでなく自社サービスも展開できればと。

– 5足わらじなんですね。

細かいのを入れるともっとあるんですけどね(笑)
人形町二丁目浪花会(なにわかい)の青年部長もしています。
地元だと、この肩書きで一番名が通っている気がします。

人形町って、4つのブロックに分けられるのですが、そのうちの一つが浪花会。

-我々、もともと中央区100人カイギでの出会いですもんね。二人とも日本橋在住で、馴染みがありますよね。

[ 磯部さんとNocchiが登壇したVol.1 ]

ですね、僕は生まれも人形町で。
町内でお祭りがある時、ブロックごとに町内会で運営をやるわけですが、僕がマーケティング理論をここにも当てはめて成功し、中央区の地域振興のモデルみたいになっているんです。

– そうだったんですか!

むしろ、ここでの活動がビジネス化して福水戸家ができた感じです。
他にも様々な会社の経営に入らさせていただいています。
evernoteの認定コンサルタントなどもやっていますが、たくさんあるので割愛。

– たくさんされていらっしゃいますが、モチベーションや選定基準などはあるのでしょうか。

僕は病気を抱えているのですが、治療の過程でたくさん人に支えられてきました。
なので、社会に対してこのお返しをしていきたいという気持ちが強いですね。
収支も重視はしますが、モチベーションの源泉はそれになっている気がします。

– なるほど。それでは、生い立ちから振り返りましょうか。

これまで


(20代の頃の磯部さん)

– 人形町で生まれ育ったんですよね。

僕は、芸者さんのお家に生まれ、地域で育てられたんです。
毎日違う人のお家でご飯を食べさせていただいていた。
なので、地域性、社会性ということは僕の原点でもある。

– なるほど。事業を続けている原点はどこにあるのでしょうね。

僕は就職活動をして一度SEになっているのですが、業務改善をしまくったところ批判されるという経験をしまして(笑)

– 我々が2度目に一緒に登壇したパラキャリ酒場でおっしゃってましたね。

目の前のある課題を抱えたまま今が継続する方を選ぶ人たちがいるのだと知った。
でも自分は改善を自分にも他人にも望む。
なので自営業をしていこうと思いました。

– その後会社を設立されたのでしたね。

はい、10年ほど継続しました。
しかし、ここでガンが発覚します。

– 多くの人が精神的、体力的に持久力を失っていく中で、磯部さんはここからの自己管理力や前向きな言動が本当にタフといいますか、素晴らしいです。

実際に病気も抗がん治療も辛いんです。
再発を繰り返し、その度に余命宣告をされてきた。
けれど、だったらやれることをやろうと思い、繰り返してきて今があります。

– 私は完全に自己責任主義なのですが、磯部さんのこの”理不尽さにさえ他責にならない”姿勢が本当に好きです。

講演でもよくいうのですが、不安を取り除くのは「勇気と覚悟」だと思うんです。
病気になって時間がとれなくなったから、時間の効率化を考えるようになった。
治療で外見が変わっても受け入れることにした。
自分であることを受け入れて前に進んでいくことを良しとする。

– その先に利他的な道を見出して、社会起業家になることを選ばれた。

はい、いいオフィス日本橋を運営したり、引き続き日本橋界隈の企業を手伝ったりしています。

自分を管理したその先に実現したいのは、自分を育んでくれた環境への恩返しだったんですね。

– 地域活動は対面によって信頼が生まれることが多いでしょうから、新型コロナウイルス感染拡大で、物理的な繋がりが減ってきているのは、磯部さんにとっては寂しいところがありそうですね。

はい、なので今一つ企画をしていて。
日本橋エリアで、ARで花火を打ち上げるプロジェクトです。

– おお、素敵!

箱崎の方などは住居エリアではなかったので、日本橋には高速道路が通ったわけですが、日本としては景観重視エリアの一つでもあり、交通の起点でもある。

– 言われてみれば。三越や商店街など、由緒ある街ですが、確かに高速道路の圧迫感はあるかもしれませんね。

実は、この話は結構以前からあって、地元の人たちの懸念材料にはなっていたんです。
とはいえ、ARでもこの道路を消して花火を打ち上げるようなプロジェクトをやるといろんなハレーションを起こしそうなので、堅実には進めています。

– まさに調整力の見せ所ですね。

他に、人形町のレストラン街のプロデュースもしていきたくて。
地元の人が多いので、料理店は結構あるのですが、マップを出すだとかそういう連携したPRがこれまであまり行われていなくて。
街づくりができたらいいなと。

– 大変そうではありますが、面白そうですし、意義も深そうですね。

はい、こういった企画を地公体に持ち込んでいます。
地域性が高まるほど、効率やITリテラシーよりも人の繋がりや伝統を重んじる傾向があり、検討は確かに大変なのですが、僕は生い立ちが特殊な分、繋げる役割であることを感じています。

– ご自分のミッションとされているのですね。

はい、そう思います。
芸者はもともと”繋がり事業”。
また、どこかの跡取りとして何かを背負っているというしがらみがあるわけでもありません。
適任なのかなと。

– 適性、目標、自己肯定などが一致していると幸福度向上サイクルが作りやすいので理想的ですね。

価値観


(青年会での様子)

– 大切にしていることはありますか?

自由・知性・品性・美しさ・飾らない姿勢。

– 学校っぽいですね(笑)

(笑)

– いつ頃からのポリシーなのですか?

10年前くらいですかね。
優先度は左から強いです。

– 言い換えると裁量、好奇心、高潔、清廉、素直…。大事ですね〜。

”美しさ”の中には感情が含まれていて。
合理的ならいいだとか、そういうことではなく、好き嫌い、気持ち良さ気持ち悪さという直感的な物事のあり方も大切にしたいなと。

– 最近別の人と同じ話をしまして、誰かに見られているから見栄を張るという話と、誰も見ていなくてもきちんとするという話は全く違うと。

心豊かであろうとする、姿勢の問題ですよね。
創造的活動をしている時のアドレナリンやセロトニンと、お酒などでトランスする時の気持ちは違う気がして。

– 健全なセロトニンはめちゃくちゃ気持ちいですからね〜。

カッコつけたいということより、純粋に自分のマインドが開けていく状態が好き。
時間帯にグラデーションをつけて、noteを書いたり、音楽を変えたりしています。

– 最近、zoomを50分刻みにして時間割作れたらいいのにという話をしたのですが、自分で気持ちや時間の管理を意識的にやるのは大事ですよね。

意識的に休み時間を作るのは大事ですよね。

– 自分をメタ認知してかつ自己管理して、感情をポジティブにもっていくところまでできる人って少ないと思うのです。素晴らしいですね。

実際に生産性上がりますよ(笑)
仕事の効率も上がるのでまた余白ができ、いいサイクルができる。

– 掲げているポリシーの他に、磯部さんは、モチベーションの根底にあるものがありそうですよね。

反骨精神は強いかもしれません。
権力や知名度に対して、寄り添いたいというよりは負けるもんかという気持ちもあります。

– 大変共感いたします(笑)

実際に努力をしてきて、結果を出せばいいと思うので、折れずに頑張れています。
群れに入っても力が薄れてしまうので、そういうやり方ではないアプローチでいろんなことを盛り上げていくのが自分の特異性なのかなと。

– 早く大きな効果が出せそうですね。病気に対してはどう思われますか。

神様からのギフトだと思うようになりました。
自分にしかできない経験から得られたものを伝えたいなと。

死を意識したら、トンネルの先が見えないような暗い気持ちになるものです。
しかし、それを逆手にとって、今という瞬間を大切するようになった。
人生は大きく変わりました。

– 自分が自分を認めていることがどれほど大きいか、よくわかりますね。

これから


(イベントでの様子)

– これからやりたいことはありますか?

日本橋を盛り上げていくことは色々と考えています。
例えば芸妓さんのプロデュース。

いま芸者さんの数自体がすごく減ってきているのですが、これを体験型にしたりだとか。

– 副業で芸者さんとかバズりそうですね(笑)

それいいね(笑)他にはオンライン子供会。
コロナの影響で子供達の交流が減っていて、今年もお祭りなどの行事開催は難しそうですが、オンラインで交流できないかと。
過去は泡バズーカとかもやったんですよ。

[ FB投稿 ]

– こ〜れは、想像以上にヤンチャですね(笑)

お父さんたちも意外と、子供を喜ばせてうずうずしているものです。
SNSで繋げてあげれば、自発的に企画を作っていったりするもの。

– コロナ前にも思っていたのですが、何かあった時に物理的に助けてくれるのは近くにいる人だけ、となると、地域のコミュニティってこれからもっと重要になると思うんですよね。

そうそう。隣のビルだとか、つっかけや部屋着で出かけられるレベルの距離。
子供の登下校の見守り。
不審な人たちがいないかの監視。

日常的なコミュニケーションを、しがらみではなく家族としての交流と捉えていくと、地域というのはすごくポジティブに考えられるはずなんですよね。
災害があった時なども大きく影響するはずです。

– そうですよね。私も子供向けの学童をやってみたいなと最近思っていて。人形町でそれができるならぜひ貢献したいです。

学童のニーズは強いですよ。
一方で人数制限や月謝の高さもあるので、入れたくても入れられないご家庭もある。

僕も、地域に貢献できることをもっと増やしていきたい。
自分にしかできないことを着実に伝えていきたい。
一緒にできることがある人はぜひISOBUへお入りください(笑)

[ ISOBU Facebookコミュニティはこちら ]

– ありがとうございました!

Guest

磯部 一郎 / Ichiro Isobe

こんなに緊張しない取材珍しいですね(笑)

社会起業家/経営コンサルタント。

中小企業向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング、人間力開発、地域社会の再生、コミュニティ創りを得意とする。
2015年に悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫)が発病。抗がん剤治療、放射線治療経て、2016年に造血幹細胞移植を行うも失敗。
2017年に臍帯血移植を行うが再発。2018年に免疫治療を実施するも副作用で右眼を失明。
2020年6月末に余命宣告を受けるが奇跡的に生存。現在は自宅療養しながら闘病中。

経営と病気の経験から人に勇気を与える活動、IT投資や情報発信の推奨、日本橋エリア(東京都中央区)の中小企業支援、IT業界の構造転換、町内会における新旧住民の融合、起業家支援、パラレルキャリア構築支援、都心における地域社会マーケティング、DX時代の人事戦略など多岐に渡る活動を行なっている。
複数法人の代表を兼務。
システム開発・コンサルティング・WEBメディア運用・コワーキングスペース・ネイルサロンの5事業を展開している。

Interviewer

Nocchi

ほぼ公開zoom飲みですね(笑)

合同会社N.FIELD代表 / Polaris管理人
フルコミが見つからないSeriesA-DのStartup向けに、ブリッジCOO+CFO機能を提供。
最近はセキュリティコンサル機能も持たせるためにホワイトハッカーの勉強中。
大手銀行、IT企業新規事業部を経て独立。一般社団法人の事務局なども務める。
幼少期より人の思考回路に関心が深く、2018年よりPolarisを運営。

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