Vol.15 – 伊吹 信一郎 / NEDOから内閣府へ出向し、ベンチャーに携わる官庁の若手エース

※内容は、2018年12月時点のものです。

挨拶とか、感謝だとか。
当たり前のことが、当たり前にできる人間で、いたい。

いま

-伊吹さんの現状について教えてください。

NEDOに所属しながら、今は内閣府に出向しています。

[ 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 / NEDO ]

NEDOでは、最初は総務だったのですが、2年目頃から、研究開発型スタートアップの支援事業の立ち上げから関わっていて。
出向先の内閣府でも同じようなことをしています。
今は直接のご支援というよりは、省庁の横串を通すとか、環境整備のようなこともやっています。

-Polaris初の官僚系ですね!いずれNEDOには戻られるのですか?

はい、いつかは戻るのかなと。
当初予定からは伸びて、来年7月までいる予定です。
一応、在籍期間については希望は言える環境です。

-出向は社内公募的な形で存在するのですか?

一応希望は出せます。
NEDOから外に行きたい(出向など)という声はあるのですが、まだまだ選択肢は多くはないのが実情です。

-実際に出向して、帰ってきた人による、組織変化はあるのでしょうか。

あるといえばありますが、難しい問題ですよね。
辞めていく人もいます。
行き先としては、民間のコンサルにいくことが多いのかな。

辞めていく人たちって、多分、いろいろと思うところはあったんだろうと思います。
他方、僕はラッキーだったんです。
というのも、僕の上司が、良くも悪くもすごく面白い人だったんですね。

まだ2年目の頃、その部長と2人で仕事をすることになった。
一般的な大企業だと、部長とヒラの間に、何人も人がいるでしょう。
でも僕はもう、直で彼と対峙しないといけなかった。

若手には、雑用が多くて疲弊する人も多いですが、僕は部長に近いところでやらせてもらって、どの仕事の意味も、透けて見えた。
お前がこれを学んで次回せるようになれという示唆がはっきりとあった。

他方で、その部長は尖った人でしたから、その人の仕事はxxさん案件みたいな言い方をされることがありましてね。
どこの会社にもあるでしょう、そういうの。

当たっちゃったね、くじひいちゃったね、みたいな言い方されることもあったのですが、僕は、そんな言い方しなくてもいいのになぁという感覚だった。

まぁ、元々、あんまり気にしないというか、そこまでこだわりがないのかもしれない。
だからこうやってすんなりやれているのかもしれませんね。

– 気にならない、は、結構大事な素質ですよね。日々どうやって過ごされていますか?

ごく普通のサラリーマンですよ!
9:30出社の18:15定時みたいな(笑)
空いた時間は趣味に費やしてることが多いですね。

– ご趣味は?

卓球です!土曜なんかに社会人チームで練習したりしていて。
その他は妻との2人暮らしなので、彼女と過ごしたり。
彼女とは喧嘩もしなくて、友達みたいな感じです。

– 素敵なご関係ですね!お気に入りのツールは?

まぁ、役所なんで色々と制限はされてまして、ITからは遅れちゃってるんですけど…(笑)
スタートアップでのお仕事をやるうちに、ITツールを知ることは増えてきていますよ!
先日教えてもらったこのツールも、空き時間に使ったりしています。
普段は芸能ニュースとかが多いですけれど、興味あるものに絞られるのはいいですね。
隙間時間の効率化というのはすごく大事だなって。

[ AIがチームに最適なニュースを毎日配信 – Anews ]

SNSはFacebookとLINE。
元々あまり使わない方ですね。
エイトも申請はくるんですけどね、どちらかというとFacebookに統一しているかな。

[ 名刺で繋がるSNS – Eight ]

これまで

-子供時代、学生時代。

よく泣く子だったらしいです(笑)
何かが気に入らないとか、悔しいとかで泣いていたような。
僕は一人っ子なんですけども、引っ込み思案で恥ずかしがり屋で。
大人になるにつれてコントロールはできるようになりましたが(笑)
未だに人見知りとかあるんですよ、仕事始めて変わりましたが。

地元が滋賀で、ものすごい田舎なんですね。限られた人としか会わない。
高校から京都で。ちょっと外に出て、軽く白紙状態になってカルチャーショック。
そこでちょっと免疫つきましたね。就職で初めて関東にきました。

-転機は、ありましたか?

地元はすごくど田舎で。
高校受験も、当時は学区制で受けられる学校が2校しかなかった。
落ちるの2-3人とかのこともあって(笑)

のんびりできていいといえばいいんでしょうけど、それじゃだめだと。
中学にいってから中学受験の存在を知ったくらいで(笑)
自分を成長させたい、いろんなところに挑戦しようと、進学校を選んだ。
でも、ここで叩きのめされたんです。

-上の環境にいったのですね。ここで何を感じられたのでしょう。

…焦り。
すごいやつがたくさんいる。
自分の存在意義って、なんだろう、と。
勉強にもスポーツにも、自分じゃない、一番がいる。
それまではある程度がんばっていればいい結果が出ていたのに。
しかも奴らは性格もよかったりするわけです。

”僕のいいところ”ってなんなのだろう。
就活でいう自己分析みたいなものですかね、”強み”みたいなやつ。

-挫折、となると鬱とかグレたりとかもありそうですが、そうはならず?

うーん、そうはならなかったですねぇ。
男子校だったからなのかな。
女子の目がないから張り合いすぎないんですよね(笑)
男の中にも馴れ合いみたいなのあるんですよ。
人間ができてるやつが多くて、ギスギスしすぎなかった。

-なるほど…この時、ご自分の良さは、どこだと?

うーん、なんだろうね…よくわからなかった。
勉強とか、部活とか、色々とそれなりにやって、一個にこだわらない方かなって。
あと細かいこだわりがないんですよ。
クラスの全員と幅広く仲良くなる方だった。

-”強み”なのでしょうね。これは得意不得意があるので。

なのですかね。好き嫌いがそんなにないのは、いいところなのかなって。

-本人も楽ですしねぇ。子供の頃の夢は。

ちっちゃい頃は新幹線の運転手!
あと動物がすごく好きなので獣医さんとかですね!
自分の家でも犬飼ってたんですけど、これで手術でミスをしたらどうしようって子供の頃にもすごく想像して、そういう責任あることを自分がやれるかな〜ってうじうじやってみたりね(笑)

-(笑) そのあと、夢は変わっていきました?

いや…それがね、なくなっていったんですよ。
僕、高校生の時にヒーローっていうドラマを見ていて、それで大学は法学部にいったんですけどね。

[ HERO ]

-あ、お正月に再放送が…これ見たことないなぁ…

法律の解釈を色々考えてどう適用するかとかやるんですが、これがもう僕は合わなくてですね。
何やればいいかわかんなくなっちゃって。
そんなうちに3年生になって、就活しなきゃいけなくなって。

-就活はどういう感じだったのですか?

大学の時はせずに、大学院に進学し、行政学を学びなおしました。
大学の時、留年間近だったんですけど、ぽんぽんと単位が取れて。
どうも、こういうのが、好きだったっぽいんです。
こういうのが好きだということは、社会のために何か役立つことがしたいんじゃないかなと。

実は、僕、第一志望は京都市役所だったんです。
その中でたまたま受けてたのがNEDOですよ(笑)

-市役所にいらっしゃいそう…(笑)受けられなかったんですか?

あ、市役所の選考に入る前に、NEDOの内定が出たんですよね。
悩んだけれど、京都市役所からNEDOは無理でも、逆はいけると僕は踏んだ。
また、ずっと関西にいたり、実家との距離が近すぎたりと、色々と要因はあったりしまして。それでNEDOに入りました。

– リスクとチャンスですね。若い頃の自分に言いたいこと。

もっと思い切って自由にやったらいいんじゃないかなぁ…
具体的に、抑圧せずにやればよかったことは、あまり思いつかないけれど、大学の頃って時間があったはずなのに、単位とるとか部活とかに追われて…
一人暮らしでもなかったし。学生活動とかバイトとか、普通に友達と旅行するとか。

– それは、今からでもやりたいと思ったりしますか?

そうですね。
だからなのかなぁ、妻と旅行したりしていますよ(笑)

-人生のどこかでリカバーできたらいいですよね。

価値観

– 伊吹さんの幸せとは。

自分がやりたいことをできていること。
今はスタートアップ系の仕事をやりたい。
なぜなんだろう。なんか楽しいんですよね。

-愛宕さんは、ベンチャーで熱中しているみんなが楽しそうで、と言ってましたね。

[ Vol.5 – 愛宕 翔太 / Shota Atago ]

いつまでここにいられるかもわからないので、色々思ったりしますね(笑)
できればこういう仕事をずっとできたらとは思う。

– きっと合ってるのですね。やりたいこと、欲しいもの。

今のような感じの仕事を…少なくとも、ライフワーク的にやりたい。
プライベートの時間も充実はしているのですが、これを崩すのは嫌かな。
欲しいものは…時間。使えるなら使えるだけ使いたいですね。

– この世代…40代以下は、他人軸でなく自分軸の幸せを自覚できている人が多いような。

一枚板の机で数百万円ですとか…いわれても、別に全然欲しいとかならない…
夫婦ともに動物が好きなので、ゆくゆくは飼える家がいいねとかは言いますけどね。

– いいですね。やりたくないこと、嫌いなもの。

大学生の方もおっしゃってたんですけど、目的がないこと…かな。

[ Vol.4 – 川崎 有梨紗 / Arisa Kawasaki ]

くだらないことにこだわって形式ばった仕事をやるだとか…
そんなのやめちゃえばいいんじゃないですかって、結構平気で言っちゃう。

あれだなぁ、面倒なことは嫌い…
今、頑張っとかないと面倒なことは仕方なく詰めたりはしますけどね。

あと意味もなく自分勝手なことされると嫌だ。
えっと…電車で変なポジション取りして迷惑な人とかいるじゃないですか…
いや、動いたれよ、みたいなね(笑)
こだわってもしゃあないことは別にね、いいですよね。
仕事でもそうで。つまんないことこだわらなくてもいいよ、って。

– いいですね。いま、5億円もらったらどうしますか。

えーっ、そんなに!?(人によって反応が分かれますね笑)
僕は、まだ”これ、やりたい!”がハッキリしてないから、多く感じるなぁ…
えー、あしながおじさんとかやるかなぁ。
エンジェル投資家とかかっこいい…(笑)

– いいですねぇ、伊吹ファンド!(笑)

ちなみに5億円って、NEDOで初めて本格的に事業を立ち上げて、もらった予算が5億円だったんです。
そういう意味でいうと、事業家にとってはいい額なのかなぁ。
僕は、まだ、政府予算の額に慣れないんですよねぇ…

– 日常生活からは乖離した額ではありますね。恋愛と結婚ってどう思いますか。

付き合う時には、まぁ、かわいいなーとかがフックで色々考えないんですけど(笑)
結果、つきあってみて、その人が甘えられる場所みたいには…なっていくのかもしれないですね。

続く関係に必要なのは、思いやりなのかなと。
僕は付き合って1年せずに結婚したんですが、僕ら二人ともお酒が好きで、よく飲むんですね。

付き合ってた頃、彼女に、転勤とかもあるかもねと話をしたことがあって。
彼女は「いいんじゃない、行ってくれば〜。私はいかないけどね〜。」って返ってきて。
互いが自立していて、依存するでもなく、共にいて心地が良くて。
僕らは、なんか、感覚がぴたりとあったんですよね。
結婚した理由を答えるのなら、それが決め手だったのかもしれない。

僕は、酔った勢いでプロポーズした感じです。
外聞は悪いけど(笑)、本音が言えたのがよかった。

– 居心地の良さって大事ですね。喧嘩したらどうやって仲直りしてます?

あ、うち喧嘩しないんですよ!
出会ってから3-4年経ちますけどね。
性格似てるんだと思う。僕らは二人とも適当だからなぁ(笑)

– 相性のよさが伺えますね。家族とは、どういう存在ですか。

最後の砦!だと思います。

友人だとか仕事仲間っていうのは、すごくドライなことを言ってしまえば、関係が終わってしまえばそこまで、で、切れるでしょう。
でも家族って途切れない。だから妻と仲良くしようとする、のかもしれない。

僕も当初結婚しないと言っていた。
周りからもそう言われたりなんかして、なんだろう、謎ですね(笑)

自己認知

-自分はどういう性格だと思いますか?

結構ネガティブな感じはしますねぇ…
昔は自己否定から入る感じだった。
仕事し始めて結構変わったんですけどね。
根は結構おおざっぱで面倒臭がりですよ(笑)

周りが気になるんですよね。
一人っ子って大人に囲まれて育つ環境が多いらしく、だから人の顔色を伺う子がいる。
顔色を伺ってスッと入っていく感じ、僕らは多分はそちらなんでしょうね(笑)

あれですね、大人になってお金と社会ポジションができてから、バシバシ言うって言われません?
でも禍根残さない不思議な人みたいな…(笑)
多分、同じ部類ですよね?(笑)

-うわぁ、すごい言われるし、自覚ありますね(笑)

NEDOでいいなと思うのはそこで。
人がそんなにいないからなのかもしれないですけどね。
学歴によるへんな障壁もないんですね。

-私も学歴差別する方は無理ですね…。他人からはどういう人だと言われますか。

温厚と言われることが多いですが、がつがつ言うねと言われることもありますね。
見た目と中身のギャップがあるとはそこまで言われることはないかなぁ。

– 自分を動物に例えると。

犬ですね!
わかりやすいんですよね。
喜んでると尻尾振って、怒ってるとキャンキャン言う(笑)

小型犬でしょうね!(笑)
小心者なところがあって。
小型犬って、怖いと吠えるでしょう、あれです(笑)

– (笑)好きな人。好みというのとは別で(笑)

おおらかで寛容性がある人。
バカじゃない?とか言われるとへこむからなぁ…(笑)
ギスギスするの好きじゃないのでうまいこと柔らかくやってくれる人。

-では嫌いな人。

細かい人…ちくちく、ギスギス…(笑)
あと一方的な人ですね。めっちゃ来られると引く(笑)

-わかります…合わないと思った人に出会ったらどうします?

いやぁ、もう、わかりやすく避けてた…(笑)
大人になったのでそこまで露骨にはならなくなりましたけど。
本当はそういう人も知れば学びはあるんでしょうけどね。。

– いやぁ、もう、逃げますよねぇ…(笑) 休みの日はどうしてます?

卓球と、動物と絡むのが大好き。あと料理!
パスタ、中華、一品ものの男料理!みたいなやつ。
妻はちょっとしたものをちょこちょこ作るのが得意なので、そこは役割分担できてます。
家事は夫婦で半々で分担してる感じですね。洗い物とか。
でも掃除は妻の方ですねぇ…

– 家事分担の話は結構面白いんだよなぁ(笑)おすすめの映画、本など。

うーん、あんまり見ないかな…
笑えるやつが好きなんですよ。
妻と一緒に初めて行ったのがTED2(笑)
TEDかよ、しかも2みたいな。

[ テディベアが起こす大騒動コメディ – TED ]

-なんだかほのぼのしますね(笑)

これから

-これからの働き方。

柔軟性は増していくと思うし、増して欲しい。
オフィスにいて、決められた席にいて、決められた仕事をして…
そういうのはもういいです(笑)

リモートとパラレルは…増える…んじゃないかなぁ…
特に若い世代はやりたがるんじゃないかなぁと。

-外国人労働者の受け入れに対してはどう思いますか。

僕は賛成です。
人種や国籍で人格が決まるものではないと思っています。
日本人が、彼らと触れ合うことで、海外に出るきっかけにもなると思う。

-素敵な回答。同年代はどういう人生を歩むと思いますか。

30代ですよね。
僕は今やっとスタートアップ支援という、やりたいことに出会えた。
30歳くらいというのは、40歳へ向かって、やりたいことの知識や現実を深堀していく期間な気がしていて。

僕自身でいえば、僕が年齢を重ねた時にNEDOにいるかはわからないけれど、NEDOがもっと自由な組織であってほしいと考えています。
僕自身もそういう組織に属していたいな。

– これからの日本。

このままいくと、息苦しくなりそうな気はします…
ネット上の叩きなどもすごく多いじゃないですか。
一方でそういうの疲れたという声もあるので、もっと寛容な国になるといいですね。

-寛容な国か。大事な言葉かも。

失敗したことをキャンキャン言うのがいやですよね。
日本という国は好きなのでそういう国であってほしい。
僕は、それを自分がやりたいという気持ちもあって、役人というポジションにある自分が、寛容な人間であろうとしているのは、あえてやっていることでもある。
仕事上もそういうプレゼンをするし、行動でも示しているつもりです。

– 自分の老後をどう想像しますか。

あ〜…現実の方は想像もつかないなぁ…
理想だと、のんびりしていたいですけどねぇ。
妻の両親が楽しそうに過ごされているので、ああなりたいとは思う。

– ありがとうございました。

終えてみて

伊吹さん
自分のことを振り返って言葉にしたことがあまりなかったので、貴重な機会だったなと思います!
ちょっと自分のことを客観視できたような気がしています!

Nocchi
政府系の方との接点が少ないので新鮮でした!
自分と似ているなと思う部分もいくつかあり気づきのあるインタビューでした。
ありがとうございます!

Profile

伊吹信一郎 / Shinichiro Ibuki
1986年生まれ。滋賀県出身。

2011年、京都大学公共政策大学院修了後、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に入構。研究開発型ベンチャー支援事業の立ち上げと運営、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)の立ち上げに従事。2017年7月から内閣府に出向。研究開発型ベンチャーの公共調達の活用推進と、各種ベンチャー支援事業・人材間での連携に取り組む。