議論メシなど、コミュニティの第一人者である黒田さん。
数度の転職を経てフリーランスになったきっかけには、フリーランスを研究するために自らがそうなろうと思ったという経験が。
生い立ちから伺いました。
余白が大事。
カレンダーにも、人との関係にも、人生にも。
現在
– 今やっていることを教えていただけますか。
全般的に、コミュニティに関わることをしています。
一つがfreelance now。
2017年2月に立ち上げまして、アドバイザリーのような形で運営をみております。
以前Polarisでもインタビューをされた穂苅さんが現在は主にマネージされています。
二つ目が議論メシというコミュニティになります。
2017年11月に立ち上げて2年半くらいになりまして、メンバーは230名くらいになります。
三つ目がディスカッションパートナー。
フリーランスになってから5年間くらい続けています。
最近は、オンラインファシリテーターという関わり方で講座やイベントに呼ばれることが増えてきました。
– オンライン・ファシリテーターは、新型コロナウイルスの影響を受けて増加した形でしょうか?
そうですね。
議論メシでのイベント開催はオフラインが中心でしたが、オンラインに移行しノウハウが溜まっていたこともあり、ご相談をいただくようになっていました。
自分では予想していなかったのでびっくりしています。
– コミュニティに関わることを始められたのはいつ頃なのでしょうか。
コミュニティに関することを始めたのはここ3年くらいですね。
– 何かきっかけがあったのでしょうか。
実は去年までフリーランス研究家という肩書きを名乗っていました。
自分がフリーランスになったのも、フリーランスを研究しようと思ったからなんです。
活躍する個人というのは、単純に個人が独立して動いているというより、その周辺にコミュニティがあることに気が付いて、自分でもコミュニティをやってみようと思いました。
深夜に思いついて、そのままのノリで始めました(笑)
これまで
– 過去が気になるところですね。これまでの経歴をお伺いできますでしょうか。
どこから振り返りましょうか…あ、子供の頃からなんですね。
幼い頃から割と理屈が好きで、問いを持つ人格だったようです。
– 内省が深いタイプには一人っ子が多いように感じているのですが、さしつかえなければ、ごきょうだいは?
2つ下の弟がおります。自動車の整備士をしています。
両親と妻は銀行員です。
弟と私は黒田家の中では例外になるかもしれません。
小学校は順当に、中学は受験をして中高一貫校で男子校へ。
まぁ性格が歪みました(笑)
– えっ!?
話す女性はおばあちゃんと保健室の先生くらいで(笑)
男子校のノリを楽しみつつも、鬱屈していました。
部活は化学部に属していました。
人間が決めたことは関心が持てなくて、歴史や国語などが好きではなく、理系の方がよかったですね。
記憶をするのがあまり得意でないのです。
理系は、数式を忘れてもその場で導けばいいと思っていました。
– なるほど。進路は何かお考えでしたか?
周囲の期待に沿って東京の大学に進学という感じでした。
大学ではいくつかターニングポイントがありました。
– おお〜。
実は高校では成績一位で東京大学へ入学したのですが、やはりそこにはすごい人たちがたくさんいまして。
敵わないなという人にたくさん出会えたのはとてもよかったです。
教養学部、理科I類だったのですが、文転して心理学科に行ったのも大きな変化でした。
人生で初めて舵取りをしたタイミングだったかもしれません。
化学物質がどうなるかよりも、人がどうやって結びつくかの方に関心を抱きました。
– 心理学に進まれて変化は生まれましたか?
心理学とは、統計学を用いた「人を科学する」学問。
直接仕事にするかはさておき、どの仕事でも必要な観点だと思いました。
また、サークルでは合唱部に所属し、テノールを担当していました。
そこで今の妻と出会えたのも大きかったです。
自分が道を外しそうになるといつも整えて後押しをしてくれました。
それがなかったら、根無し草で安定感なく色々とやっているだけだったかもしれません。
– そうだったのですね。就活はいかがでしたでしょうか。
就活らしいものは行わず、ベンチャーや中小企業ばかりをみていました。
同期が大量にいる中でのポスト争いに関心を持てなくて(笑)
決裁権を持って、小さい会社を大きくしたいと考えました。
あとは入社してみないとわからないなと思い、1社目はDo Houseという老舗のマーケティングの会社に決まりました。
– そこではどのようなことを。
そこで新規事業をやらせていただいて、それがきっかけで新規事業の仕事をやるようにもなったので、これも転機でした。
そのあと、2年おきくらいに転職し、フリーランスになったという経緯です。
興味が移っていってしまうんですよね。
自分はフリーランスが向いていたということかと思います。
価値観
– フリーランス研究家ということですが…フリーランスいかがですか?
もともとは、フリーランスが職業として食べていけるのかという観点で研究していまして。
文系フリーランスは食べていけるのかというメディアもやっていました。
– 自分もエンジニアやデザイナでない中で独立は試行錯誤でしたが、実際どうなのでしょうね。
仕事の経緯は口コミがほとんどで、あとはリピートですね。
そのために、相手へいかに報酬以上のことを返せるかということかと思います。
なので結果としては「食べていける」ということかと。
– なるほど。フリーランスになってよかったことはありますか?
時間の自由、関係の自由が手に入ったことですね。
どこにいて、何をして、誰といて…人はいろんな自由を求めていますが、フリーランスは特にこの二つがマネージしやすいです。
仕事に人生を合わせるというより、人生に仕事を合わせやすいやり方であると思います。
– 逆に大変だと思うことは。
自分の成長を考えてくれる人がいなくなるので、自分が自分の上司にならないといけないということですね。
難しい仕事を目指していけば自然と成長する気はします。
– フリーランスに向いている方はどのような方と思われますか。
自分で舵取りをしたい人。
興味関心がうつりやすい人。
人の好みがはっきりしている人。
– わかりみが深い(笑)。フリーランスとコミュニティの関係についてはどう思われますか。
LIFE SHIFTという本に三つの資産というものがあります。
コミュニティがあることで得られるのは特に変身資産だと思っています。
キャリアチェンジなど自分を変身させたい時にコミュニティがあったほうが変身しやすいのです。
– 示唆に富むということなのですかね。
フリーランスがフリーランスでなくなる時も、コミュニティの中の変身材料をきっかけに、起業してみようとか、この会社に入ろうということが起こりやすいですね。
– 良いコミュニティの特徴に、どういうことが挙げられると思われますか。
良し悪しというよりは自分の好き嫌いになるかもしれませんが、私自身は中央集権というよりも自律分散型が好きです。
自律分散型の場合はメンバーが主体で、そこでの活動がコンテンツになっていく。
– Polarisではコミュニティ・マネジャーという肩書きのある皆さまに過去取材させていただいておりますが、この職業をどう思われますか。
マネジメントというよりはファシリテーションの感覚の方が強いかと思います。
いらっしゃったほうがコミュニティがまとまりますね。
– コミュマネの本質はファシリ、なるほど。ファシリテーターの素質とはどういうものだと思われますか。
3タイプあるかと思っています。
5-6人のサイズをテーブル・ファシリテーション。
50-数百人のサイズがフィールド・ファシリテーション。
これらを中長期的に運営するのがコミュニティ・ファシリテーション。
この前提を踏まえた上で、全員に必要なのは”観察力”かなと。
ファシリテーションを僕は習ったわけではなく、どれもこれも実地で身につけたものではありますが(笑)
– 従来、これらは「クラスの人気者」「頼れる人」といった抽象的な性格として分類されてきたように思うのですが、スキルセットや職業として認知されていくでしょうか。
行政の資料にもコミュニティ・マネジャーという言葉は徐々に出てくるようになりました。
コミュニティ・デザインという言葉も増えましたね。
一方でKPIが設定しにくい、また、中長期的に成果が出てくるものなので、評価が難しいものではあると思います。
そうすると、他のスキルセットがある上で、ファシリテーションスキルが高い方の方が市場価値が上がりやすい、ということになりそうですかね。
– コミュニケーション・スキルは思いやり、観察眼などから構成され、特に集団に対しそれを発揮できるのは、実は稀有な能力であるということが可視化されてきたのかもしれませんね。
これから
– 黒田さんがこれから研究されたいことは。
色々とありまして…
私がディスカッション・パートナーや議論メシをやっているのは、対話に”新結合”を生み出す力があると思っているからなんですね。
ファシリテーションをしていていつも、小さな新結合が生まれるのを見ます。
影響を高めるためには議論メシの関係人数を増やすといった戦略もあるのですが、コミュニティには適正サイズもあるので、一定の人数の姉妹コミュニティを増やしていくのが良いかと最近は考えています。
– なるほど。分科会、派生版のようなものですね。
人が集まると何かの議論が始まって、そこから新しいものが生まれていく流れができていけばいいなと思っています。
誰かが自分に合ったコミュニティを見つけやすくなるといいなと。
自分一人で成し遂げるよりも、人とやったほうが拡散しやすいので、やはりメンバー主導のコミュニティのほうがいいかと思っております。
– 最近、よく生まれてくるワードやトレンドなどはありますか?
「リアルとオンライン/バーチャルの組み合わせ」については注目なようです。
この間出てきたのは旅、街、学びなど。
周りからは、仕事はリモートを継続、友人や家族とのふれあいは早くリアルを復活させたいという声を聞きます。
– 働き方も今後変わっていきますかね。
そうですね、実際に私もコワーキングスペースを概ね解約しまして、在宅をしています。
ほとんどのことはオンラインでもできますが、リアルでは”感覚の共有”を求めているのだと思います。
– ご自身では、先日ラジオでリアルがお好きとおっしゃってましたね。
[ 管理人Nocchiが友人たちとやっている人生相談ゆるゆるラジオ(かなりゆるいです!) ] 黒田さんゲスト回そうですね、キャンプとかはリアルで行きたい(笑)
ディスカッションはオンラインがいいと思っています。
身体的課題、距離的課題など、オンラインでは超えやすいものが増えます。
ディスカッション・パートナーも議論メシもオンラインになりまして、これからもオンラインで行うと思います。
– 相手の皆さまのご反応はいかがですか?
これは様々ですね。
ただ、4割が海外・地方のメンバーなのでオンラインでいいのかなと。
知り合いがどんどん引っ越したり多拠点居住の方も増えてきたので、できるだけ物理的制約はやめようかなと。
– 離れていてもつながることができるのはいいですね。
加えて場所代がかかりませんので、実験はとてもしやすいです。
– 確かにそうですね。ご自身でこういう生活を望むというキーファクターはお持ちですか?
僕はビジョナリー型というより嗅覚で動く感性タイプ。
なのでそういう選択がしやすいようにできるだけ身軽でいたいですし、いつでも変身できるような資産をもっていようと思っています。
そうすればいつまででも変身していけますし、変身していければ仕事にも困らないと思っていますので。
変身するために必要なものの一つが、まさに余白かなと思います。
– まさにニューノーマルですね。ありがとうございました。
Guest
黒田 悠介 / Yusuke Kuroda
やはり、誰かに質問されながら話すのっていいですね。
特に子供の頃どうだったって、思い出して言語化する機会はなかなかないので貴重でした。
「議論で新結合を生み出す」という活動ビジョンを掲げて、新しい職業とコミュニティを生み出しています。
①「職業×議論」としてはディスカッションパートナーを生業としています。
スタートアップから大企業の新規事業まで、主に1on1の議論を通じて立ち上げを支援。
②「コミュニティ×議論」としては議論メシを主宰。
「議論メシ」は、議論というフラットでポジティブな対話でつながるコミュニティ。
お互いの意見や価値観を尊重しながら、新しいアイデアやモノの見方を一緒に作り上げる実験場です!議論をとおしてメンバー同士が自然とつながり、様々なコラボレーションも生まれています。
他に、フリーランスコミュニティ「FreelanceNow」の発起人でもあり、かつては「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営するなど、「フリーランス研究家」として働き方の多様性を高めるための活動も。
ハンチング帽とメガネがトレードマーク。東京大学文学部心理学→ベンチャー社員×2→起業(売却)→キャリアカウンセラー→フリーランス研究家→ディスカッションパートナー→コミュニティデザイナーという紆余曲折なジャングルジム型のキャリア。
公式サイトはこちら
Interviewer
Nocchi
WeWork六本木の頃に一度お見かけしたことのある黒田さん。
ゆるらじをきっかけに知り合うことができ、今回のインタビューとなりました。
フリーランスは今後も増えていくと思うので、皆様の参考になるとよいですよね。
合同会社N.FIELD代表 / Polaris管理人
SeriesA-DのStartup向けのブリッジCOO機能を提供。
オプションで資金調達も行う。最近はセキュリティコンサル機能も持たせるためにホワイトハッカーの勉強中。
大手銀行、IT企業新規事業部を経て独立。一般社団法人の事務局なども務める。
幼少期より人の思考回路に関心が深く、2018年よりPolarisを運営。
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