Vol.38 – 山口莉来 / 高校編入とスタンフォード留学を経て、N高3年生の私がいま思うこと

※内容は、2019年6月時点のものです。

角川ドワンゴが始めた新しい通信制高校のN高で3年生になった山口さん。
通学制の学校生活を続けることが難しいとわかったとき、人と違う道を歩むことへの恐れと、そこから広がる新しい可能性に悩み、一歩を踏み出す方を決意したと言います。

誰もが、自分の決意と行動でいくらでも人生を切り開けるという勇気をもらえるお話。
洞察力、内省力、行動力、表現力がどれも抜群の彼女は語る内容もとても深く、一人の大人として読んでいただきたい記事です。

最後まで、やる。
そこから学ぶことが、たくさんあるから。

いま

– お久しぶりです。いまやっていることを教えてください。

N高の3年生をしながら、様々な個人活動をしています。

[ 学校法人角川ドワンゴ学園 – N高 ]

受験生なんですが勉強があまり好きではないので、困ってます(笑)
興味がないことにモチベーションが維持できなくて。

– 私も同じです(笑)学校生活はいかがですか。

実は、高校生活の最初の1年は、通学制の別の学校に通っていたのです。
そちらに通い続けることが難しくなってしまい、色々悩んで、最終的にN高へ2年生から編入することを決めました。

– N高生だと告げると、周囲の反応はやはり違うもの?

違いますね〜!
正直にいうと、ブランド力があるなと(笑)
N高っていうだけで見る目が変わると言うか、人が興味関心を抱いてくると言うか…

– 慶応SFCみたいなものですかね(笑)

こちらとしては話しやすいのでありがたいです(笑)
高校生というブランドにさらに足されてる感じです。

[ 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC) ]

– N高の特色を伺えますか?

学ぶものを自分で選べるところです。
普通の高校だと必修が決まっていて、それいる?みたいな勉強をしなきゃいけない。
受験期も、学校のテスト範囲と受験対応が合わないからどちらを優先しよう、みたいな悩みがあるらしいです。

– これは…夏休みの宿題問題と同じような悩みですね…

N高だと受験に必要なものしか履修する必要がないので、効率的に時間を使えます。
やりたいことに集中できることが特長だと思います!

– いいですね。逆に、N高で大変だったことはありますか?

実はいくつかあって…(笑)
編入だったこともあり、入学当初は、放置されている感覚を覚えていたんです。
あっ、今はもうなじんでるんですけどね。

担任の先生もいるんですが、対面のコミュニケーションが恒常的にあるわけでもないので…コミュニティがなかなかできないんです。
私はスタンフォード大学に留学したこともあって、N高の中にも人脈はできたんですけどね。

でも彼らに出会っていなければ、ほかのN高生とコミュニケーションをとることは少し難しかったのかなって。

– スタンフォード大学へは、クラウドファンディング(以下、クラファン)でお金を集めて、昨年行かれていましたね。

[ Campfire – 日本の教育格差をなくすために、スタンフォード大学で学びたい!]

はい、昨年の8月に、スタンフォード大学国際教育プログラムに参加しました。
これは、スタンフォード大学が20年以上前から行っている高校生向けの教育プログラムで。

[ スタンフォード大学国際教育プログラム ]

世界中から選ばれた14~17歳の学生をキャンパスに招待し、スタンフォード大学の文理学部、工学部、医学部、ビジネス学部で実施されている授業分野を2週間にわたって学ぶことができます。

日本からは私が通うN高等学校のほか、慶應義塾大学湘南藤沢中学・高等部、灘中学・高等学校、早稲田実業中学・高等部から選考された生徒が参加。
世界の高校からも生徒が集まり、育ってきた国や人種の異なる人達と意見交換することもできました。

スタンフォード大学で行われている授業を体験できて、本当に興味深かったですし、自分が何に関心があるのかを明確にする1つのきっかけにもなったかもしれません。

– クラファンも124%達成だったんですね、すごい!

はい、おかげさまで資金を集めることができました!
リターン(クラファンにおいて、資金提供者へ御礼として渡すもののこと)として設定していた青空報告会も無事に開催できました!

[ クラウドファンディング・活動報告(活報) ]

中学二年生の時に、ISAK(International School of Asia Karuizawa)のサマースクールに行ったのですが…

このサマースクールには、世界中から異なるバックグラウンドを持った学生が集まります。
共に授業を受け、アクティビティに参加し、生活する中で多様性を学び、視野が広がりました。
同世代でこんなにも熱い、尊敬できる人がいるんだと衝撃を受けました。

[ ISAK ]

– 先日、ISAKの生徒さんたちとお話する機会があったのですが、「東京に行く際に時間ができたので、グラレコ(グラフィック・レコーディング)について教えて欲しいのでお時間もらえませんか?」とお声がけをいただいて。行動力が素晴らしいなと思いました。

成績が優秀なのはもちろんですが、視野の広さや思考の深さが抜群だと思います。
あと、生徒はもちろんですが、スタッフ、講師陣含めたISAKにいる人たちの人間力の高さに感動します(笑)

私はそこから、教育格差をなくすことを仕事にしたいと思うようになり、スタンフォード大学のプログラムに参加したんです。
この時の人脈は今でも本当に活きています。

– ではこの時のご友人が、N高での人脈拡大の礎にもなったんですね。

そうですね!
私はそれがあったのでよかったですが、N高での生活は基本的に、自分次第だと感じています。

– 授業はオンラインで…修学旅行がドラクエって聞いたことがあるけれど(笑)部活は入っていたりするのですか?

部活は一応あるんですが、ゲームとか将棋とか、やっぱりオンラインでできるものがほとんどで、私は入ってないです。
他にもN高のSlackの中で沢山同好会チャンネルがあるみたいです!
連絡ツールもSlackだし、先生たちとの連絡もそれ。

-社会人でもまだまだ知らなかったり使ったことがない人が多い中で、先駆的ですね。

私も正直、N高に入るまでは知らなかったです(笑)
でも私たちの世代だと使える人、増えていそうですね。
少人数コミュニティで使われることが多いので、NPOとかベンチャーのプロジェクトに携わったことがある人は触れる機会が多い印象です。

[ Slack ]

N高のWorkspace(アカウントのこと)にもチャンネル(トピックごとのスレッドのこと)がたくさんあって。
例えば私はAO入試を受けようと思っているんですが、これについての情報がまとまったチャンネルもあったりして、情報収集はすごくしやすいです。

[ AO入試と推薦入試の違い ]

– お話を伺っていると、私もりこちゃんの世代だったらN高に行きたかったなと感じます。個人で活動されているコミュニティのほうはいかがですか。

主なものだと、高校生のコミュニティの副代表をしています。

[ 学校では学べないことを学ぶ – Teens関西 ]

関西でやっている、高校生の間に何かに挑戦したいけれど、どこから何をすればいいのかわからないという人たちを集めている団体です。
元々はそこに一回きりの運営のつもりで入ったのですが、メインで入ってほしいと言われて、今は副代表のポジションです。

代表は、プログラミングに関心の強い男の子2人で、今は私入れて3人と他の9人のメンバーで運営しています。

多様性が欲しいという意味もあって、女性である私の存在が求められたところもあったみたいです。

– こういう活動はどうしても男性の方が多めな現状ですが、いずれ半々になってくるといいですね。

そうなんですよね。
男女で視点がかなり違うことが多いので。

一方で、うちの団体は、女性の加入者も結構多いんです。
今企画しているイベントはプロジェクトリーダーというイベントの発案、指揮するポジションの子が女性ですし、運営メンバーはほぼ半分が女性です。

組織内での役割としては、客観的な視点からのアドバイザーが多いですね。
後述しますが、私は主体的に前に出て音頭を取ることが多かったのですが、この組織ではNo.2として全体を客観視できたらなと思っていて。

– もう分人を獲得したのですね、素晴らしい。

イベント企画もおもしろいと思っているから経験値を上げるのにもいいし、取捨選択する目も養われるから、大学に行ったときにもきっと、無駄な時間を過ごさずに済むのではないかなと。

– そうですね、時間をもつこととどう使うかを自分で選び取ることがもっとも大事なことだと、私は思っています。

そうなんですよね、どれが有益で、どれが時間対効果が高いかということを判別する目がないから、遠回りしてしまうことも多くて。

ここの組織では、同世代とのつながりがもてたことがとてもよかったです。
今までは面白い大人と話したい意欲のほうがすごく強かったんです。
きっと、未知のものをくれるから。
でも、同世代のつながりからも沢山刺激をもらえて、とても楽しいです。

– 10代、20代のうちはその方が学ぶスピードが早いことが多いですね。

でも自分が大人になったとき、彼らはメインプレイヤーではなくアドバイザーに回っているわけで…。
そうすると、自分がプレイヤーになったときの仲間って、やっぱり同世代なのではないかと。
だから、彼らを知って、仲間を増やすことは、将来的に自分の活動を進める上で必ず必要なことだと。

– そうですね。

最近はそんなに新しい活動は始めていない、ですかね。
色んな人に会いに行ってはいますが、自分の考えをどう思うかというフィードバックをもらったり、新しい情報をインプットするためという感じ。

アメリカの大学に行っている大学生と先日繋がったのですけど、その方が言っていたのが「若い頃に日の目を見すぎてアウトプットをし続けると、上手くいかなくなったり、インプットするタイミングが減る気がする」と。

若い頃に起業したり、メディアに出たりすると…ってことだと思うんですけど…
世間のほうから自分に寄ってくるし、すでにラベルが貼られているから、入ってくるものも偏るんじゃないかって。

アクティブに行動するのも必要だから、アウトプットすることは続けたいんですが、今は、たくさん、インプットするのも大事かなって思っています。

– 人間は自分の知っているものしか想像できないので、知らないものをたくさん見て、話して、獲得することで自分が広がるのだと思います。素敵だと思う価値観をもつ人に、たくさん会えるといいですね。

これまで


(ISAKサマースクールでの山口さん)

– 学生時代…まだ学生か(笑)子供時代、いかがでしたか。

そんなに前ではないんですけど…(笑)
2歳の時に、父と母が離婚しまして、そこから母子家庭なんですね。

うちの場合は結構母と距離が近くて、兄弟とか友達の関係も混ざっている感じ。
だから立場が逆転するときもある。
これは、私のアイデンティティを作る一つの要素で…

母は私が小さい頃から1人の人間として、大人として扱ってくれるようなところがありました。
自分のことは自分で決めて、自分で責任をとる。
こういった彼女の教育方針から、私はそういう価値観をもって育っていったんだと思います。

– 親が子に伝えるべき、唯一絶対のことは、これだと私も思います。私も両親に最も感謝していることは、これを教えてくれたことですね。

少なくとも自然とそれを意識する人にはなっていると思います。
ある意味で頑固でもあるし、興味が向いたところにとことん行動するなどというところに現れているかなと思います。

– とてもいいですね。精神的自立そのものでもあり、エフェクチュエーションでもあり…

[ Polaris Night #3 – エフェクチュエーション – 開催レポート ]

だから小中学生の時も、割と行動派だったんです。
実行委員とかをよくやって、先生の信頼も勝ち取っていくポジションをよくやっていた。(笑)

– 大底さんと少し似ているかも。

[ Vol.36 – 大底 春菜 / コミュニケーションスキルで変えていく – TimeTicketコミュマネが創る世界 ]

もちろん、いろんな人の対面に立つし、ほかの人よりもその運営について考える時間が長い。

常に責任を負っている状態。
これはプレッシャーでもあり、それが心地よくもある。
でも最近は、これをやりたいという気持ちが、薄れつつあるように感じます…

– 多分、責任を負うポジションになることで得られる経験値を、得きったんじゃないでしょうか。関係者の感情に対応すること、客観的に判断すること、被害を最小限に抑えて効果を最大限にすること。そろそろ次のフェーズ、ですかね。

そう…なのかな。
あの…忘れられないことがあるんです。
小学六年生の時に、担任の先生に気に入られていて。

その人も、私にやらせたいと思っていて、私もそれでいいと思ってた。
クラスのみんなも、担任の先生と私の組み合わせをある種…気に入ってくれていて、一緒にやってくれる人が出てきて…

– 士気が高まる構造になっていた。正しくリーダーシップですね。

そう、なんですかね。
その後、別の担任の先生に変わって。
その方は以前の先生ほどリーダーシップタイプではなかった。
そうしたら、先生が変わったことで、みんなが変わってしまったんですね。

ああ、これって先生が好きだから、みんなが一つになっていたんだって。
みんなが別のほうを向いてしまったら、逆に私は一人になってしまう。
これがはじめての挫折でした。
だから、私は積極的に、みんなに働きかけないといけないポジションになった。

– アーリーアダプターの獲得からか、大変ですね。

でも、人の心理って、ああしろこうしろって言われてやりたくなるわけがないでしょう。
当時の私にはこれがわからなくて、みんなが変わらないこともよくわからなくて。
先生が誰だろうと、モチベーションは自分の中にあるものではないの?って。

– これはきついですね…。

そこで一回黙ってみようと思ったんです。
マネジメントが不在になった時に、彼らがどう動くのか見てみようと。

– おお、いいですね!自発的に動けなくなった時点で、一度手を放してみると底力が見えるので。

結果的に彼らは、人を邪魔しようとか、モチベーションが全然ないだとか、そういう人たちではなかった。むしろ可能性があるポテンシャルの高い人も多かった。
ただ、迷いがあるんだなと。
何をすればいいかわからない、どこに行けばいいのかわからない、そういう状態。

– 先ほどの「自分で決める」をまだ知らないフェーズにいる人々なのですかね。ここから分岐するだろうなぁ…

それまでは1番手のポジションだった。
でもそれがあったから、2番手として1番手を誘導するポジションをすることにした。

– これをすることによって、客観性が備わった。軍師ポジションですね(笑)

そうです、そうです!
だいぶ違うポジションになった。

– でも、このポジションは一個難点があって…。本人も自覚していない感情すら利用して、こちらの意図した行動をするように誘導するので、周りがそのスキルを認知できない。軍師と名がついていればいいのだけれど、現代はそれがないから、承認欲求は得にくいんです(笑)

あ〜!な、なるほど…。
ええと、私は自分で言うのもなんですが…元々きらきら気質で(笑)

主体性をもって注目を浴びたいところは強いと、自覚がある。
だから…No.1を取るときとNo.2を取るときを、使い分ければいいのだと思っていて。

パッション系って言われることも多くて、Startup Weekendの時とかも「あれはりこちゃんのパッションが人を動かしたんだよ」って結構、言われる(笑)
ただ、どれが自分なんだろう、どれを人が認知しているんだろうって…

[ StartupWeekend 白浜 20180914 開催レポート ] ※彼女と筆者は同イベントに共に参加し、3日間ルームメイトとして過ごしています。尚、山口さんは同イベントにて優勝されました。

– どちらも自分でよくて…自分と他人をきりはなして理解できるというスキルを獲得したのでしょう。これって、他人は自分の期待通りに動くことはないという諦めをどこかで覚えねばならず、特にパッション系の人にはとても辛く寂しい出来事ですが、実はコミュニケーションの第一歩はこれだと思っています。

なるほどですね…
でも、これってあたりまえのことでもあると思うんです。

他人を変えるというのは、私は少し傲慢な気がします。
もともと違うものなんだから、その違いを楽しむということが大切だと思います。
今の私にとってはこれはかなり自然で、あたりまえのことになっているかもしれませんね。

– 素晴らしいし、それが出来ると生きやすいでしょうね。拡大自己で会話をすると、なぜ周囲の人が自分の思考を理解できないのかを理解できない。そして社会人になると指摘してくれる人間は減るので、それを自己認知することはなかなか厳しいでしょう。

そう!
同じ日本語で話していても、会話が噛み合わない人はいますよね。
そうしたらいつまでも伝わることはない。
どちらかがどちらかの言語に寄せるしかない。
でも10代や20代は、違うことを理解している人は増えてきている気はするし、変わりやすいと思います。

– 最近クローズアップ現代でも”おじさん”が採り上げられていましたが、個人の意思や特性を重視するのではなく、世間体やプライドや肩書でコミュニケーションを図るものであるという多大な勘違いをすりこまれてきた世代は、最終的に孤独を味わうのは彼ら自身なので…それはそれでつらいのでしょうね。

[ クローズアップ現代 – あなたは“脱おっさん”できる? いきいき働くためのポイントは ]

お互い押し付けると上手くいかないので、本当に難しいですね。
ただどちらも悪くないと私は思います。
世代間ギャップでもある。

彼らは同質化を良しとする教育を受けてきたから、被害者でもあるとも思います。

– 言われたこと、されてきたことを実直に守ってきたら、多様化できていないとか、老害だとか言われて。彼らとしては「なぜこんなに悪く言われるのだろう」ときっと疑問でしょうね。まぁ、我々だって変わらなければ若い人から”害”と呼ばれる日はくるわけで、状況適応能力の話な気もします。

あとは、情報量の問題な気もするんです。
私たちの世代は、放っておいても情報が入ってくる生活をしてきた。

TwitterやFacebookやネットがそばにあり、使えることが当たり前なんです。
どうすればいいかを知っている。
それが苦ではない。
変わり方も知っている。
でも上の世代はそうじゃないんですよね。
やり方を知れば、変わっていけるのかも知れない。

– だから、高校生コミュニティをやるのですね。

はい、情報ギャップを埋めることは、行動様式で出来るはずなんです!
スキルがないのではなく、やり方をしらないだけ。
魚の釣り方をYouTubeで見たら、魚を釣れるようになるでしょう。

-コミュニケーションや情報収集のOJTのようなものなのですかね。学校では集団生活の本質は伝えきれないということか、あるいは、集団の概念がアップデートされたのか…。

社会人の人も、ご年配の方も、同じだと思うんです。
やり方を教えたら、生き生きと変われるかも知れない。

– あ〜…割合としては少ないかも知れませんね。

え!?
だって、面白そうなのに…!?
面白ければ変わりませんかね?

– 多分、そもそも、好奇心ドリブンで行動できるのはエフェクチュエーションタイプで…パレートの法則でいけば、8割は判断基準がおそらく「面白そう」ではなく「やるべき」であり、周囲の慣習やルールを振り切ってまで自発的に行動を起こす人はまだ少ない気がします。あとは根本的に変わりたいと望んでいるのかどうか…。

へ~!なるほど。
私も、周囲が自分と同じ価値観かというと、結構違うなとは感じてきて…
8割の人が多い環境に生まれて、自分がマイノリティであることを自覚し、2割の人が住むムラを目指して旅をしてきて、今きっと2割に囲まれている、のかなと思ったりします。

– 囲まれるとそれが世の中って思っちゃいますよね。私も2割のムラにたどり着いて暮らしているようなものなので、2割が普通になってきちゃいましたが…会社員もしている自分が言うのもなんですが、会社の人と会話すると新鮮さを覚えることすらあります(笑)

逆に、8割の人にとっては、8割の世界が当たり前に映るでしょうね。
実際に割合も多いのだし。

私たちは自分たちがマイノリティの自覚があったから…。
でも、どちらがいいとかは全く思ってなくて、どちらにも幸せの形があって、良さもあると思います。

– はい、そう思います。幸せならそれでいいんです、つらい人の手を取りたいだけ。あとは単純に、楽しそうなことは誰だってやりたくて。隣に経験者がいて、大丈夫だよ、こうするんだよ、一緒に行こうって言ってくれたらやってみたいって、思う人はいるのではないかと。ポテンシャルというもののは、おそらく、そこにある。あとは、楽しいと感じるものが、どれだけ存在するかですね。

好奇心の枯渇というものは、誰にでも起こる気はするんです。
意欲というものがなくなった時に、どうなるのだろうという怖さが、最近、少しあって。

何かを追いかけることを諦めてしまうと、もういいやという気持ちになる。
だからあきらめないというのをモットーにしようと思っているんです。
諦めないために、たとえ周囲に全否定されても、自分を信じて、頑張ろうって。

– モチベーションが消えた時の虚脱感は、結構きつそうですね…

多分、モチベーションがないならないで、何かに寄ればいいとも思うんです。
得られる幸福の種類が違うのだと思う。
頑張らずに、穏やかな日々を味わう幸せだって存在する。

ただ、自分は、クリエイティブが認められることで幸福を強く感じられるタイプだから、違うポジションにいったとしても幸福感を多分得られないんです。
他人にとって幸せでも、自分がそれを幸せだと感じなかったら、もうどうしようもない。

– 動きたーい!ってうずうずするでしょうね(笑)好き嫌いの本質をよく説くのですが、どれほど主観的と言われようとこれはもう他人がどうこう言えないと思います。

だから頑張るしかないんですよね(笑)
だって、そうしたいんだって、そうしているほうがワクワクして、自分らしいんだって、自分が一番知っているのだもの。

– そうですね…N高を受けようと思った動機はなんだったのですか?

高1で別の高校に通っていた時、そこが嫌だったからという消極的な理由ではないんです。
すごく楽しかった、JKライフを大満喫しました!(笑)
来ている人たちもすごくポジティブだった。

ただ、私は中学1年生の時に「起立性調節障害」という病気を発症して。
簡単に言うと血圧をコントロールできなくなる病気です。

[ 起立性調整障害 ]

めまいや動悸、吐き気などの症状がありますが、私の場合は長時間座っているだけで、体がダルくなり、立ち上がると共に意識を失ってしまうこともありました。

その関係で、単位の問題がでてきて、そこに居続けることができないことがわかっていたんです。
病状の関係で、通信制の高校なら通えるのがわかっていました。
でも、ここでレールを外れることになるのもわかっていた。
これはやるべきこと提示し、道を示してくれる人達がいなくなるという意味ですね。

– いつか、ゆいと話すと、いいかも知れないね。

[ Vol.12 – 笹野 ゆい / 私が16歳からフリーランスとして働く道を選んだ理由 ]

同じような状況になった方がいらっしゃるんですね。
私は、全日制の高校に残ることもできたんです。

ただ、中長期的に考えた時、通信制にいくことで変わる人生も見えた。
いろんな学校を見た中で、N高は全然ネガティブな選択肢ではなかった。

学校の特殊性。面白さ。自分を伸ばすことができそうな仕組み。
実際に学校の説明会にも行って、スピーカーの方の熱量があって、これもいいなと思った。

– 入ってよかったですか?

本当によかったです!
人生変わったと思います(笑)

– 人へおすすめしますか。

う〜ん…
ちゃんと、すべての選択肢を考慮したうえで、それでもここが自分に一番いいと思った人にとってはとてもいい場所だと思います。

とりあえず今の場所では微妙だとか、そういう消極的な理由だと厳しい部分もあるかなって。

-そもそも自立していて自分でものを決める人を対象としているだろうから、教えて欲しい、救って欲しいという状態で行っても、合わないでしょうね。

そうなんです。
でも何を教えてほしいのか、どうやって救ってほしいのかをちゃんと言語化できて、与えられたものにちゃんとトライできたら、いろいろ学べるかもしれません。

働いているから学校に時間を割けないなど、時間が限られている人にはおすすめ。
通信制の中ではとてもおすすめします。

価値観


(クラウドファンディングの青空報告会での山口さん)

– 今一番はまってること。

え、ええ〜…情熱をもってること…
局所的ではないんですけど…

3歳の時から私ダンスを続けているんです。
ヒップホップをずっとしていて、もう10年近く経ちます。
今この時というよりも、ずっとモチベーションがある。

– 2つ目に質問しようと思っていたのが”やっていて一番楽しいこと”だったのですが、これっぽいですね(笑)

あ、そうかもしれません(笑)
好きなこと…なんだと思います。

あ!あと、私、人と話すのがすごく好きなんです。
ダンスは、ずっと、”2つ目の好きなこと”として存在しているイメージ。
ダンスを好きで長くやっていると、「プロダンサーになるの?」と聞かれることがあるんですが…
そういうことじゃないんです。

1番目じゃないから。
でも2番目から落とすつもりもないんです。

– おお、これはいい概念ですね…!私にとっては絵を描くことがこれかも。

好き。うまくなりたい。ずっとやっていたい。
1番目はころころ変わるんです。
でも2番目はずっと変わらない。

– 人と話すことは、今の一番?

はい、人と話すことってめちゃくちゃ楽しいじゃないですか。
少し前までは、「りこちゃんはメンターがいたほうがいいよ」とお勧めいただいて、メンターを探していたんですが…

そもそもついていきたい!という状況になかなかならなくて…
最近はいなくていいかなって思います(笑)

– 私はメンターがいたことはないですが、欲しいと思ったことはないなぁ…。むしろ、つながっている全ての人が、自分に影響を与えてくれるのだと。でも誰かをフォローする人生を生きるつもりはない、ですね…

そうなのかもしれません!
確かに、固定の人をトレースすることを望んでいるわけではない…ですね。

– 固定化したくないからたくさんの人に話を聞いている…?

ああ、そうなのかな…
いま変化途中にあるのかもしれません。
自分というものがまだ確立できていないから、様々な価値観に自分を、晒したい…?

– ”好き嫌い”はどうですか。

うーん…
好き嫌いはもちろんあるのですが、合わない人の中にも、素敵なものがたくさんあるわけで。

なので、そこでバサリと切るということはないと思います。
ああ、でも、最近は、これは違うと思うものにNOと言えるようになりました。

– おお、取捨選択はとても大事なことですね。

人に承認されたい気持ちがすごく強いんです。
求められたい。でもみんなと同じでいたくない。
全部含めて承認してほしい。
わがままですね(笑)

– うーん、だとしたら、りこちゃんが主体者、創業者になるものが何か一つあったほうが安定するのでしょうか?

どうなのでしょう…
なかったとしても、クラファンでもなんでもそうなのですが、私はまず自分の話をするんです。

私という存在へ、その価値観へ、フィードバックが欲しい。
自分を認めてほしいという欲求がすごい(笑)

実は、父が結構そういう人で。
彼は4人兄弟の3番目で、田舎の島育ちで…ポテンシャルが低いわけではないのに、周りが優秀で評価されにくいという環境で育ったんですね。

– 私は実経験がないのですが、きょうだい間で親に比較され続けるのってかなりきつそうですよね…。

そうですよね…。
彼は自信もすごいんですが(笑)、コンプレックスも強いように感じます。

彼は他に類を見ないくらい承認欲求が強いんです。
とにかくめげないんです。
学生時代にそれこそ独裁みたいなことをやっていじめられたことがあるらしいんですが、これにも全くめげなかったそうなんですね。

見返してやるというモチベーションが強いのか…
職場で周りが全員うつになるような環境に入ることもあるそうなんですが…彼は全くめげないので、みんなびっくりするらしいんですよね。
「あいつ、つぶれへんな」みたいな(笑)
後輩から「山口さんは超人」ってよく言われるらしいです。

– ある種、めちゃくちゃ向いているのかも(笑)折れない心はどうやってできたか、みたいな題目で登壇されないかしら…お話聞いてみたいです(笑)

なんだろう、ハングリー精神とでもいうのか。
母はそこに惚れたらしいんですけどね…

– (昔の少女漫画のようだ…)

これが親戚とかなら面白いんでしょうけど、父親ですからねぇ(笑)
尊敬しているし惹かれる人ですが、一緒に生活できるかっていうと…

ジェットコースターって毎日じゃなくてたまに乗るのがいいじゃないですか。
父は本当にジェットコースターみたいな人なんです(笑)

離婚したのはそれがあるのかなと。嫌いとかいうことではなく…
ただ、自分の中に彼の血がすごく濃く流れてるのを感じるし、総合的には彼が父親で良かったなと思います。

– 恋愛と結婚の差とでもいうのか。あ、でも、身内にちょっとキレキャラがいると耐性がつくので、社会にでてもストレスが減るのがいいですね(笑)

そう!そのへんのちょっと変なおじさんとか全然平気というか(笑)
出会っても楽しめるんですよね!

– 怖いものが少ないのはいいですね。話は変わりますが、よく使うアプリはありますか?

InstagramとFacebookかなぁ。
Facebookはやっている人とやってない人がいて。同世代で使ってる人は正直少ないです。
私は使ってます!知り合いが情報シェアしてて、結構情報流れてくるから便利です。

新聞はとったことなくて、ぎりぎりLINEニュースとかですかね…。
友達登録していたら、流れてきたものをついでに見るかな?くらいな。

[ LINE news ]

電子決済はau walletを使っていて!
アプリが便利で結構好きなんです。

[ au wallet ]

利用履歴を全部見れるじゃないですか。
私はお小遣いは全てau walletにチャージしているので、何に使ったのか携帯でわかるのはすごく嬉しい!

– LINEや他の決済アプリにも家計簿機能があったりしますが、どう思いますか?

めっちゃいいと思います!
ああいう機能があると使いたいって思う。

– (PFMはエンゲージに有効なのか…)

[ PFM / Personal Financial Management ]

あとはやっぱりインスタが好きです!
特に意味もなくプライベートを楽しんでる感じです。

あれって自己満足じゃないですか。
自己満グラムとか言うし。
逆に自己満じゃない人いるの?って思ったりします(笑)
女子高生なんて自己満足の人がほとんどだと思うので、私もそれに便乗して楽しんでます!
載せるだけで承認欲求満たされるプチストレス解消?みたいなのもあるし(笑)

[ instagram ]

-私はりこちゃんに初めて会った時に「インスタ交換しましょう」って言ってもらったことがきっかけで始めたので、とても感謝しております(笑)

えっ、そうなんですね!?(笑)
私たちの世代って、一緒に遊んだら、後でみんなで撮った写真をアップ(ロード)するのが、割と普通で。
昔だとプリクラとろ!みたいなこと、なんですかね?
(↑アラサーにも伝わるように言い換えてくれる山口さん)

でも、インスタにあげるために遊ぼ!みたいなのはあんまり好きじゃなくって。
そうじゃなくって、一緒に遊ぶ中で、投稿するときに映えさせようとするのは楽しいなっていうか。
意識してない方が映えたりするし(笑)

-遊びの一環に”映え”があるのはいいけれども、自己承認欲求につき合わされたり、それに追われてる子はどうだろうってことなんですね。深いなぁ。

これから


(スタンフォード大学留学時の山口さん)

– 今年やりたいこと。

とりあえず大学に行きたいです!
ただ、必ずしもとは思っていなくて…

今回で受からなかったら、それはそれでいいかなという感覚です。
まずは自分のやってきたことや考えを評価されるほうが大事だと思っていて。
最初は起業でそれを体現をしようと思っていました。

– あら、そうなんですね。メイク動画で起業した、高校生起業家の内山恵梨香さんとか、お話するといいかも知れないですね。

えっ、そういう方がいらっしゃるんですね!
ぜひぜひ、機会があれば嬉しいです。

[ First Make ]

– 1年後の自分はどうなっていると思いますか。

大学に行っているかどうかで、全然違う気がします。
もしAO入試で自分が評価されなかったら、それを受け止めて、めちゃくちゃ勉強しようと思っています。

受かっていたら、今以上に、やりたいことをどんどんやってると思います。
そこはあんまり、今後も譲るつもりはなくて。
大学に行きながら、横のつながりをつくっていきたいです。

– お仕事についてはイメージお持ちですか?

ええ、うーん…
まずは大学なので、なかなかまだイメージはないです…。
でも、自分で稼いで、経済的自立をしてみたら、エンジェルというか…投資をしてみたいと思います。

6月からN高投資部というのが発足して、そこで投資を勉強できることになったので、その知識も長く活かしていきたいんです。

[ N高 投資部 ]

自分が今までお世話になってきたから、その恩返しをしたいなと思っています。
職種でいえば、企画は楽しそうなイメージがあります。
いろんなことを生み出す側であり続けられたらと思います。

-これからが楽しみですね。 ありがとうございました。

終えてみて

りこさん

楽しかったです!
普通に会話してる感覚だったので、この内容が、世の中にでるんだって思うと、不思議な感覚です(笑)。
自分の思考は言語化できてない部分もあるので、こうやって対話ができるのっていいですね。

Nocchi

昨年のStartup Weekend 白浜で初めてお会いして、一緒にドライブしたり、同じ部屋で寝泊まりしたりしたりこちゃん。
等身大の高校生でもあり、一人の大人でもあり、お話ししているとこちらもとても影響を受けます。
まずは大学受験、うまくいくといいですね。
またお話しましょう。

Profile

山口莉来 / Rico Yamaguchi
2001年生まれ、兵庫県出身。
ISAK サマースクール2015に参加し。
兵庫県立国際高校に入学後、高校2年の春からN高等学校に編入。
その年の夏にスタンフォード大学国際教育プログラムに参加。
その際クラウドファンディングを利用し、約70万円ほどを集めることに成功する。
現在は高校生団体Teens関西の副代表を務める。
また6月から始動したN高 投資部に入部し、投資について学んでいる。